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残念女子高生の異世界願望  作者: きりてゃん
5/6

HR

 その声に反応し、またしても教室の一同が一斉に声のした方を見やる。


 その声に一際(ひときわ)反応したのは、もちろん翔也だった。なぜなら、その声を出したのは翔也の隣に座っていた綾だったからだ。


(え?こいつなにやってんの?今、お前が出る場面じゃないじゃん!?は…?いやいやいやいや!!!!)


 翔也が、心の中で綾に猛烈なツッコミをかましていると綾が口を開いた。


「竜神さん、それに他のお二人も駄目ですよ。先生が来るまで教室から出ては行けません。」


 翔也は、何が起こっているか分からない。


 綾が、普通に普通のことを言っているからだ。こんな時、綾なら当然おかしなことをしでかすに決まっている。そう思っていた翔也は、普通すぎるその綾の言葉を聞き呆気に取られていた。


「確かに、教室から出るのは得策ではないでしょう。しかし、このまま先生が来なければここにいる皆さんは、不安が募る一方では無いかしら?」

「ええ、確かにそれは一理あります」

「でしょう?だから、私が今から先生を呼んできて差し上げるのです」

「だけど、先生と入れ違いになったらどうするんですか!?今は、先生一人が居ないだけ。だけどそうなれば、今度はあなた達三人が居なくなるんですよ!!」


 確かに、綾の言うことにも一理ある。さすがにこれだけ時間が押していれば、3人が帰ってくるのを待たずしてHRが始まってしまうだろう。


「そんなHR寂しいじゃないですか!!」

「それは…」


 綾の彼女達に対する熱弁が効いたようで、竜神 佳奈は言葉を詰まらせる。それを、見逃さず綾が続ける。


「…五分!あと、五分待って先生が来なかった時は…えっと、彼が職員室まで迎えに行きます!」


 いきなり、矛先(ほこさき)を自分に向けられた翔也は、綾の方を向き両目と口を大きく開けて驚きを(あらわ)にしている。


「…分かりました。そこまで言うならもう少し待ちましょう。…二人もそういうことだから」

「ちぇー、分かった。」

「はい……」


 三人が、渋々席へ着き。やっと、教室内が落ち着きを取り戻す。すると、翔也が綾に慌てて声をかける。


「おい、綾!どういうことだ!」

「何がですか?」

「何がじゃないだろ!なんで、俺が先生を迎えに行くことになってんだよ!」

「なんだ、その事ですか」

「なんだって、お前なぁ……」


 本当に、気にしてないのであろう綾のその姿を見て、翔也はため息混じりで呆れ返る。

 そんな翔也をやはり気にもせず、綾は続ける。


「まず、異世界に行く条件は、大きく分けて二つあります。一つ目は事故なんかで死んで転生すること。そして、もう一つが召喚などによって転移することです。」


 また、突然訳の分からないことを言い出す綾に対して、翔也の頭の中は当然混乱する。


「えっと…?」

「はぁ…じゃあ分かりやすく話しますね。まず、あの時私が声を上げなければどうなっていましたか?」

「…三人が教室から出て、俺が行かずとも先生を呼びに行ってくれていたな。」


 その呆れたような綾の態度に翔也は少しムッとしながら嫌味ったらしく答える。


「そうです!三人がこの教室から出ていました。そして、先生がその後すぐに入れ違いで教室に入ってきたら?」

「…三人が教室にいない状態で、HRが始まるだろうな。」


 当然のことを、当然のように翔也は答えた。

 間違っていない。そう、翔也の中では。しかし、綾は違っていた。


「いいえ、正解は三人が教室にいない状態で、異世界転移が始まっていたです。」


 綾の思考に、翔也は全く追いつくことが出来ない。確かに、翔也の頭は常人と少し変わっている。しかし、綾よりかは常人に近いことは紛れもないのだ。


 しかし、綾に少しずつではあるが慣れ始めた翔也がなにかに気づいた振りをして言葉を返す。


「じゃあ、さっき三人を呼び止めたのって…」

「当然。私を舐めないでください!最悪、三人よりも、一人の方が都合がいいからに決まってるじゃないですか!いいですか?そもそも今日は、入学式ですよ?ゲームなんかでも、イベントが被ったりするみたいなことあるじゃないですか!」

(頼む…早く来てくれ、先生ー…)


 興奮しながら、若干早口で話す彩に耐えられなくなった翔也は、心の中で助けを求めていた。先生さえ来てくれればこんな話聞かなくても良いのだ。


 そんな翔也に、微塵の欠片も興味が無い綾は続ける。


「──だから、こんな時こそ起こるかもしれないじゃないですか!!」

「それって…まさか…!!」


 渋々、翔也も付き合う。


「クラスのみんなで、異世界転移ですよ!」


 ドヤ顔のような笑みを浮かべながら、当然のようにそう返す綾に、翔也も当然のように思うのであった。



(…なんだこいつ)

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