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これからの話し

 突然ですが、最終回となります。

 無理やりとはいえ終わらせるために書いていたせいで、昨日は投稿できなかったです……すいませんでした。

「っ!」

 呆然としている僕の傍から動いたのは、コハクだった。

 手に持っていた槍を、リアの身体ごと貫き、その背後にいるであろう人物に向けて攻撃する。

 しかし、その攻撃は当たっていないのか、コハクの表情は晴れない。


「待って。私とあなたが殺し合う理由はないと思わない?」


 姿が見えないのに聞こえてくる、聞き覚えのない、おっとりとした声。

 僕に聞こえないように会話できるはずなのに、こうして声を聞かせてくるということは、僕にも話を聞いてもらいたいということだろう。


「だってその子は、別にあなたの仲間でもなんでもないでしょ?」

「……でも、仲間意識はあったよ」

「……話は聞いてた。

 あなたを迫害していた私達の落ち度があるのも認める。

 だから、私はあなたを殺さない」


「随分と上から来るんだ。姿を見せないのに」

「私は、そういう役目だから」

「……話に聞いてた奴、か」

「話に聞いてた?」

「この湖側のトップの側にいる、姿を見せない暗殺を主とする守護者の話。

 ……わたしの家に来る前に感じてた気配も、あなただったってことね」

「そういうこと」


 あの、開けた場所に行くまでに付いてきていたっていうやつか……。


「……それなら、あなたの言い分も納得か。

 あなたなら、私を殺すぐらいどうってことないのに、殺さない。本当に争う理由がないってことか~。

 でもわたし、ここの湖に睡眠薬を流した犯人だけど? そのせいで皆ああして殺されちゃった訳だし」

「それが無かったら、皆毒で即死だったから。結果的には良しでしょう。

 それに、あなたを殺そうとしたら、多分この集落の英雄が黙っていない」

「英雄?」

「……あなたは、気付いていたのね」


 遠くから、響いてきた声。

 誰もいなかったら聞こえてこなかった程の静かな声。


 でも、それがあの人の――キリーさんの声だということは、すぐに分かった。


「集落にいる外部の兵士はすべて倒して、既にその水も確保してる。

 だからもう、この集落に驚異はない。

 ここに来ていたトップもまた、睡眠薬が先に作用していたことは誤算だったようだし、多分これで終わり」


 キリーさんが近づいてきている間に聞こえてきた声には、僕が聞いた限りは敵意がないように思える。


「集落の中心点である地下洞窟はまだ薬の影響を受けてないんでしょ? だからあんなに、この人達を案内してたんだし」

「最初から話聞いてたからそう思っちゃうか~……でも、それは毒が撒かれてないことを前提に話してた時だからさ。

 わたしはほら、仮にもここの住んでたから、湖の流れも知った上で薬を撒けたけど……さっきあなたが殺した子は、その辺を全く知らずに薬を撒いてる。

 そうなるとどこまで影響あるかなんて分かんないって」

「だったら、水をキレイにすれば良いってことじゃないの?」


 それは、僕の口から出た、提案にも似た疑問だった。


「あのね……水に混ざった毒素だけを抜き出すなんて真似、出来ると思うの?」

「……アテは、ある」


 キッパリと、告げる。

 それはずっと、リアと話していた時から、考えていたこと。


「アテ?」

「そのためにも、リアの水は持ち帰らせて欲しい」


 姿見えぬ声の疑問に、中空へ向けて言葉を投げる。


「その子は私達の湖に毒を撒いた存在。許されるはずがない」


 そう返されるとは思っていた。

 でも、彼女がいないと、“こちらも困る”。


「彼女はあくまでも、ここを襲った滝側の集団に利用されただけ。


 彼女もまた、生きる希望がなかったからこそ、そこを衝かれて利用された。

 ……今の彼女はもう、そんなことはない。

 人との共存を考えているあなた達と一緒になったと言っても、過言じゃない」

「過言が過ぎるでしょ」


 まあ、さすがにこの説得は無理筋か……。


「だったら、私からもお願い」


 僕の肩に手を置いたキリーさんが、そう口添えしてくれた。


「もし、その子がこの集落に迷惑を掛けるって分かったら、それこそ私が殺します。

 責任を持って」

「……まあ、集落の英雄が言うなら良いでしょう。

 で、そうすれば本当に、この集落の湖をキレイに出来るのね?」

「絶対、とは言い切れませんが、可能性はあります」

「その可能性っていうのは?」

「毒を作った滝側に向かいます」


 それこそ僕が、ずっと考えていたこと。

 睡眠薬を撒いて、毒を撒いたという話を聞いた時から、その作っている元の場所に行きたいと考えていた。


 その時はただ、漠然と、毒を取り除くための手段が分かるかな~、とか、毒を作れれば僕も戦えるかな~、ぐらいにしか考えていなかったけど。

 要は、作り方レシピ|を知っていれば、キリーさんの役に立てると、そう考えていただけのものだった。


「そこなら、もしかしたら作り方があるかもしれませんので」

「……そのために、繋がりのあるその子が必要、ってことね」

「ええ」

「……一ヶ月待ちましょう。

 それまで、私達はここの集落の人達をまとめて、待っています。それまでに湖をキレイに出来ないなら、別の住処を探しましょう。

 まあその間も、襲ってきた集落側の人達はどうなるかは分かりませんが」


 そのぐらいは良い。

 僕も聖人君子じゃない。

 見知らぬ人に対してまで情けをかけることは出来ない。


「……あなた達がここを離れるのは、正直困るわね」

「あら、英雄さんはもっと残ってほしいと?」

「……その英雄というのは止めてほしいけれど」


 と、前置きをして、キリーさんは続ける。


「ここの湖が人間社会の飲み水に使ってもキレイなままなのは、あなた達のおかげなのが大きな要因となっている。

 そのおかげで、私の近くの井戸水とまだ使えるんだし」

「ふふっ、そちらの理由のほうがメインっぽいですが。

 それでもまあ、それまでは待てませんよ。

 さすがの私でも、誰もいなくなった集落を一人で守り続けるには、限界がありますから」

「なら、早く終わらせられるよう、彼が頑張る」

「……あなたがそこまで言うなら、信用はしましょうか」


 最初の頃よりも柔らかくなった言葉を最後にどこかに行ったのか、コハクもキリーさんも、少し周囲を見渡していた。


「……それでアキラ、本当に大丈夫なの?」

「本当に賭けの領域ですよ、毒の分解に至っては。

 でもこうでも言わないと、妹さんのための新鮮な水が手に入りませんから」


 そこが一番の懸念だった。

 真っ先に引き受けた、大切な約束を守るためにも……他の頼み事も聞く。

 そうするしかなかった。

 そうした方が良かった。


 何より僕が、リアを助けたいとも思っていたのだから。


 自分から死にたいと思っている人を、そのままにしておくだなんて……僕には出来ない。


「ここの水が無理なら、滝側の水を頼るしかない。

 そう考えていたからこその方法ですよ」


 コハクたちの種族が住んでいるのなら、キレイな水があるということ。

 だったらそこのを採取させてもらうしかない。


「僕は、前にできなかったことをやるために、ここにいますので」


 言って、リアだった、未だ水のままのソレを見る。


「前にできなかったこと?」

「後で話すよ。

 コハクも、付いてきてくれるんならね」


 そうなったらもう、彼女には話してもいいだろう。


「……わたしはいいよ。別に付いていく必要もないでしょ?

 なんなら、この集落を、あの人と一緒に守っていっても良いし」

「そう言わないで。

 私は、コハクにも一緒に来て欲しい」

「お姉ちゃん……?」

「あなたがこの集落で迫害されているのなら、私の家に来て欲しい。

 ルーちゃんも絶対に喜ぶから」


 こちらはこちらで話が固まりそうだ。

 僕が挟める口は、もうどこにもない。


 地面に水となり、どういう理屈か分からないが、地面に染み込まずに水溜りになったままのリアを、空いている小瓶に回収していく。


 ……また、昔出来なかったことをやることになりそうだ。

 必ず、成し遂げられるよう……頑張ろう。


 もう、あの時のように……誰かに頼ってばかりじゃない。

 僕が、頼られるよう、僕自身が立ち回ったんだ。

 特に今回は、キリーさんにも頼られた。


 それなら……やらない訳にはいかないだろう。

 グダグダと愚痴を垂れ流すなら、本当はこのままキリーと一度街に出て、湖の種族に英雄と呼ばれていた理由の話をしたり、彼女の普通の人間じゃない正体を見せたりとか、それから滝に行ってまたひと悶着あったりとか……色々と妄想はしてましたが、ここで終わりにします。


 というのも、申し訳ないことながら、他にやりたいことが出来まして……。

 そちらが一段落したらまた書けば良いのかもしれませんが、また別の、全く新しく書きたいものが出来たので、次に投稿するのはそちらにしようかと思っています。


 おそらく十一月の半ばが終わりぐらいになるかと思いますが、その時はまたよろしくお願いします。




 それでは約二ヶ月半、読んでいただきありがとうございました。

 自由に書いてたから多分、文章カットしたら半分ぐらいの量になりそうな気はしてますが、それでもまあそうなるからこそ、楽しかったと言えるかと。

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