移動中の会話
子供にしか見えないが、やっぱりこの子は僕より年上だ。
分かっていたことなのに、それを改めて認識した。
そしてこれまた間違いなく、周りの子達も同様だろう。
同い年か年下にしか見えないが、人生における経験値は、圧倒的に彼女たちの方が高い。
……そもそも、村八分にされてきたコハクと、親と周りの看護士さんに優しくされてきた僕とでは、例え同い年であろうとも、その違いは顕著に現れていただろうが。
「それじゃあ、あの助けた女の子も、コハクが?」
「まあね~。ここに預けるのが、あの子のためになると思って」
「そうなの?」
「わたしがいた集落では見かけなかった子だし、そう思ったらこの集落がわたしにしてきたことを考えたら、置いといたほうが危ないかと思ってさ」
ふと、あることに気付く。
「コハク、この子たちと知り合い?」
「知り合い、ってのとはちょっと違うかも。
手を組んだ、ってのが正しい」
「やっぱり……」
「何か気付いた感じ?」
「というか、気付かない訳ないって。
渡してくれた睡眠薬のことも考えればさ」
おそらくは、同じ種族同士の争いに、コハクを利用したのだろう。
いや、コハクが利用した、といっても正しいかもしれない。
ただ間違いなく、そこには利害の一致があった。
「それに何より、僕を助けてくれた時のやり取りですぐに分かるし。
追い詰める時の作戦だって、事前に聞いてたから来たんでしょ?」
「作戦? そんなのないけど」
「え?」
「あ~……そっか。なるほどなるほど。
聞こえないのが当たり前だったっけ」
言って、コハクは小さく口を開ける。
でも、それだけだった。
何かを話し始めるではない。
小鳥の欠伸を見ている気分になった。
「どう? 聞こえた?」
「え? 何が?」
「やっぱりそっか。
わたし達の種族はね、普通の人間には聞こえない声を出せるの。それを連絡手段として利用してただけ。
だから、アキラが逃げていく方向も分かったから、こうして迎えにもこれたって訳」
聞こえない声……イルカの超音波によるやり取りみたいなものか?
いやでもあれは鳴き声があるし……どちらかというとモスキート音みたいなものだろうか……?
「催眠薬を使った作戦をしてるのに、それを逆に嘘に使うってされたら、そりゃいきなり殺されても文句言えないって話よ。怪しさ満点じゃん」
「本当、助けてくれてありがとう」
真相を知った今となっては、アレは悪手以外の何物でもなかったことは分かった。
……それにしても……追いかけてくる速度も遅かったが、普通に歩く速度も遅いな……。
キリーさんと一緒に歩いていた頃は、意識して早歩きしてくれていたのかもしれない。
それでこちらの普通の速度とほぼ同じ速度ってことだから……本当、人間の子供よりも遅いかもしれない。
ただヨタヨタとしてる訳でもなく、しっかりと歩いてはいる。
それが逆に、体感的により速度を遅く感じさせているのだろうが……。
……まだ着かないのだろうか……。
「……コハクってさ、何でこの人達に協力したの?」
無言のまま歩くのも気まずいので、分かりきっていることとはいえ質問することで、場を繋ごうとする。
協力した理由なんて分かってる。
迫害してきた集落の人達に復讐したいからだろう。
「ああ、それ?
死にたいから」
……また、思っていたのとは違う答えが聞こえた。
「……死にたい、っていうのは……?」
「そのままの意味。
わたし、生きていたくないの」
その、答えは……。
聞いただけで――僕を助けてくれた相手であるにも関わらず――僕の中に、苛立ちを、植え付けてきた。
う~ん……終わりまで持っていきたいところなのに、中々……ちょっと整理したりとか展開の余計な部分を削りたい。
そのため本当は明日休むつもりでした。
が……ちょっとあまりにも中途半端なので、明日も更新します。
明後日あたりはお休みするかもですが。