表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/63

新たな可能性

 長々と書きすぎたのは、相変わらず設定厨なせいでもある。

 とりあえず、いつもより長いので、これで明日の分も……ということにしていただければ……はい。

「コハクって、何かしたの?」


 彼女の家と言われ案内されたテント内で、キリーさんが部屋の隅にある、布団のような場所で女の子を寝かせているのを眺めながら、ついに聞かずにはいられないことを彼女に訊ねた。


 広さとしては申し分ない。むしろ“テント”と表現していることが申し訳なくなるぐらいの大きさだ。

 普通に立って移動できるし、何なら四人家族が住むリビングぐらいはあるだろうか。

 物が、寝床と一人用の小さなテーブルしかないのも、広く見えている要因なのだろうが。


「……さすがに誤魔化せないか」


 諦めたように、一つため息を吐くコハク。


「いやだって……」


 その空気から喋りたくないのは分かったものの、それでも中途半端に察したままより、ちゃんと聞いておいたほうが良い気がした。

 だからここに来るまでに気付いたことを話す。


「コハクのこの家だけ、集落からかなり離れてたから……」


 ここにたどり着くまでに通った、集落の中にあるテント間の道。

 そこを抜けてしばらく歩き続けてようやく、この家に辿り着いたのだ。


 誰ともすれ違わないどころか、テント一つありはしない道を、ずんずんと進む。

 そんな人気も何もない場所に着いてしまった以上、察しないはずがない。


「……ま、簡単に言ったら、わたしは集落から爪弾きされてるの。

 だから遠くに住むのを辛うじて許してもらえてるって感じ。

 もしかしたらあの毒の騒動、わたしが怪しいとでも思ってるんじゃない?」


 だからつけられて話を聞かれそうになっていたと、そういうことを言いたいのだろう。


「キリーさんは、知ってたんですよね?」

「まあね。私の責任でもあるし」


 今までの反応や、ここに来ることになっても文句を言わなかったのだから、やっぱりといったところか。

 ただ、キリーさんの責任とはどういうことだろうか? 結局コハクが何をして、こういう目に遭っているのか話してくれていないのと、関係あるのだろうか?

 ……気にはなったが、あまり深く掘りすぎて、本題である毒の話が出来なかったら話にならない。


 そもそも、この離れた家まで歩いたからこそ、気付いたこともある。

 優先順位を履き違えてはいけない。


「でも、そこまでして嫌われている中、結局家の近くまでその追いかけてきてた人はいたんですよね?

 それなのに、こんな遠い場所に来るまで、遠くから様子を伺うだけで済んでるってことは、源泉が原因じゃないのかもしれないですよ」


 僕が感じた引っかかりを、皆の前で口にした。

 周りに何もなくなって、追いかけているのがどうしてもバレるという所に来ても、一向に声をかけてこなかった、例のキリーさんが気付いた人の気配。

 本当に見通しが良くなるまでついてきていたその人影を、僕は全く気付かなかったが、キリーさんはどうやたらここに着くまでずっと気付いていたらしい。


「確かに、アキラの言う通り。私もそこは気になった。

 ということは、水以外が原因で、彼女が倒れた可能性が高いかもしれない」

「でもそれなら、何が原因ってなるの?」

「……この子の家とか、この子個人が狙われてるとか、そういう感じかも」


 コハクの最もな疑問を答えることは、キリーさんにも出来なかった。

 何よりも情報が足りない。

 ただ、毒の原因が源泉で無い可能性が高くなった以上、敢えて調べに行く必要性も薄いかもしれない、ということにはなる。


「何も分からないから、その源泉を調べに行くって手もあるにはあると思いますけど……」

「それはそれで危険かも」


 僕の提案にしかし、キリーさんは渋い顔をする。


「集落で追いかけてきていた人たちの目的が分からない以上、あまり動き回るのは得策じゃない」


 この倒れていた子を個人的に狙っているのか、コハクの言う通りコハクが毒を撒いた本人だと思っているのか……そのどちらを目的としてストーキングなんて真似をしたのか。

 それが分からない以上、この倒れていた子を一人には出来ない。

 だからと再び担いで移動するのは……。

 ……いや。


「毒がこの子だけを狙っているものだとしたら、コハクが何かを行った原因だと、集落の人たちは考えていないんじゃ……?」


 もしそうなら、キリーさんが気付いていたその追いかけてきていた人は、この子個人を狙っていたことになる。


「もし、集落には何の被害も無かったら、それだけでその追いかけてきていた人個人の動き、ってことになりません?

 それを確認しないといけませんけど……いやでも、通ってきた集落がイヤに静かだったから、やっぱり被害が遭ったとか……?」

「あそこはいっつもあんなものだからね~。

 明るい内は、外の水辺とかで昼寝ばっかりするの。わたしもそれ目的で歩いてたところで、お姉ちゃん見つけたぐらいだし。この家なんて、夜に安全にしてられるためにってあるだけだもん。

 昼間はあんなゴーストタウンも真っ青な静けさが当たり前だし、異常があったかどうかの参考にならないよ」


 呑気にコハクが答えるということは、実際にそうなのだろう。


「……ううん、違った」


 でもそれを、この集落に住んでいないキリーさんが否定した。


「確かに、思い返してみれば、おかしかった。

 いつもはテントの中にも気配はない。

 そして今日も、テントの中に気配はあった。

 ただ、“毒を患ってる人がいるとか、誰かを治療しているとか、そういう気配でもなかった”」

「…………」


 思い出したキリーさんの言葉に、コハクも絶句していた。


「ということは……日が出てるのに、家で寝てるってこと?

 寝てる気配だから、わたしじゃ気付かなかった……?」

「寝てる気配……そうか。

 そうかも。

 アレは寝息に近かったかもしれない。

 別の種族だから、私からじゃあ確かとは言えないけど」


 寝てる……それも話の流れからすると、集落全体で、とみて間違いないだろう。

 そんなことがあり得るのだろうか? 普通の人間社会でも、集団で一斉に、一定の地域全体が眠っていたという事実があれば、それは人為的なものがあったと考えるに決まっている。

 例えば入院している時、鎮痛剤などを入れられ、痛みが引いて眠らせるような……いやもっと単純に、睡眠薬を投入してもらうとか……。

 ドラマとかも引っ張り出してくるなら、クロロホルムで眠らされてとか、現実味のない方法も──


「──!

 あの……キリーさん」


 もしかして、と思って、ある気になったことを訊いてみることにする。


「キリーさんがこの子に使った参照術って、毒素を抜くものなんですよね?」

「ええ」

「それって、強制的に眠らされた眠りとかも、取り除く対象にならないですか?」


 ゲームとかでよくある状態異常。

 その中にある“眠り”。


 もし、睡眠薬とかでの強制的な眠りが、その“取り除く毒素”に該当し、取り除くものとし参照術が認識していたとしたら……!


「……詳しくは知らないけど……体内の毒素を抜くものだから、可能性はある……かも」

「じゃあ……彼女が罹っていたのは、毒じゃなくて……!」

「あっ……!

 強制的な薬による眠りを浄化しただけ、っていう可能性もある、ということ……!」

 そんな訳で前書きに書いた通り、明日も更新をお休みします。

 今週はちょっとお休みが多くて本当に申し訳ないです……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ