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毒の発生源

 キリーさんが使う、草と火の混合参照術。

 それは体内にある毒素を火で熱消毒し、それで治しきれないものを、草の属性で解毒するといったもの……らしい。


 つまり、傷を治すとか、そういうのではないということ。

 だから、身体の中からおかしかったと、そういうことだ。


「毒……か」


 毒の原因が分からない以上、その場にいることが原因の可能性があるのでとりあえずこの場に留まるのは得策ではないと、倒れていた女性を抱きかかえて当初の目的地とは別の場所へと移動を始めていた。

 その移動中に漏れた、コハクの言葉だ。


「コハク、この子のこと、知ってる?」


 背負っている子を軽く背負い直したキリーさんが彼女に問いかける。


 キリーさんが背負っていた大きな籠は、今は僕が背負っている。

 中身が何も入っていないので一番軽い状態のはずなのに、かなりの重さを感じる。

 そんな自分が女の子一人を背負えるはずもないので、キリーさんに頼むことになったのだ。


「あ~……ごめん。分かんない」


 さすがに同族が毒にやられたからなのか、会ったばかりの頃の元気さは無かった。


「となると、集落全体が毒に冒されているのか、この子だけが毒に冒されてるのか分からないってことか」

「あ、そっか。家とか分かってたらその辺調べられたのか。

 ごめんね、分かんなくて」

「そこを謝られると困るから、気にしないで」


 さて……と話を切り替え、歩きながらこれからのことの相談を始める。


「となると、まずは集落に立ち寄るべきかもね」

「他の人達にも毒の影響があるかどうか調べるため、ですか?」


 僕の疑問に、ええ、と短く答えて続けてくれるキリーさん。


「そうなったら、私達が目的としている水の回収も、考え直さないといけない」

「それは……水に毒が混ぜられてるかもしれない、ってことですよね。

 あれ? でもそれだと、街の水源である以上、街の人達も危ないってことなんじゃ……」

「どれぐらい毒が広がってるかによるかも」


 そう答えてくれたのはコハクだった。


「湖にも流れがあるからね。わたし達が集落にしてる場所は、基本的にわたし達しか飲水に使わないよう、水の流れが渦巻いてる閉鎖的な場所なの。

 さすがに湖全体が毒されてると意味がないけど、わたし達の種族しか狙っていないものなら、街の人間にも、この湖に観光に来ている人間にも、影響は無いと思う」

「そこの判断もしないといけない、か……。

 もし湖全体なら、誰かの意図が働いているのか、自然環境の異常によるものなのかも調べないと。

 でももし、あなた達の種族が飲む場所にしか毒が広がっていないのなら……狙いはあなた達で、確実に意図したものだってことになる」

「そうなんですか?」

「彼女たちの種族は、水の傍で生きている種族だから。自然環境的なもので水が汚れるような生活はしていない。

 そして、彼女たち種族に気付かれないよう毒を混ぜて飲ませることが出来ている以上……彼女たちのことを熟知している誰かの存在がいるのは明白になる」


 全く分かっていない僕にも、キリーさんは丁寧に説明してくれた。


「でもまずは、その辺をハッキリさせるためにも、飲み水にしている場所を見に行くしかない。

 そこに異常があるのかどうか。あったら水流外の水がどうなってるか調べて、無かったらこの子の家が個人的に異常があったという判断が下せる。

 ……そういう意味でもまずは、この子を安静にしておける場所に向かわないと」

「それなら、わたしの家かな? 街を自然と通っていけるから、そのついでに水源地に寄れるもん。

 で、集落からちょっと離れてるから、安静にもできるし」

「……良いの?」

「その子が目覚めた時、もしかしたら恨み言吐かれるかもしれないけど。

 でもまあ、同族だしね」

「助けたのに恨み言を言われるんですか?」


 そんな恩を仇で返すようなことをしてくるのだろうか? という純粋な疑問。


 今度も答えてくれるだろうと思って、何とはなしに口にしたソレはしかし、キリーさんもコハクも、曖昧に濁すだけで、答えてはくれなかった。

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