試作品
作り始めての夜の部分を丸々削ったらめっちゃ短くなった……。
しかし無くてもなんとかなりそうだったからなぁ……余計な分は削らないとだし。
翌日の真っ昼間。
朝食を頂くこともせず、ずっと火と睨めっこして作り上げた妹さんの薬を、昼食後に持っていって見せた。
「……これは?」
「新しい薬の試作品」
試作品、とは言ったが、作るための分量が分量だっただけに、実は既に二十近い数が出来上がっているのだが。
「え? 見た目全然違うんだけど」
入れ物はキリーさんに言われたとおり、今までのものを使用。
だから妹さんが言っているのは中身の話だろう。
色が全く違う。
キリーさんが作っていた薬は、牛乳を長時間放置していた時の上澄みみたいな、黄色と茶色の中間みたいな色をしていたが、こちらは透明が少し白濁かかっているだけ。
瓶の蓋を開けても、あの強烈な匂いは全くしない。
作っている途中は、色も匂いも、お風呂場の浴槽にミルク系の入浴剤を入れた時のようになっていたのだが、それも時たま混ぜながら煮込み続けていれば、正に本の通り出来上がった。
後は、僕が全く知らない味だけだ。
味見もせずに作っただけに、これが一番不安だ……。
「……もしかしてこれ、今から飲む流れ?」
「出来れば」
「いやでも、一回飲んだらしばらく飲まなくても良いって話じゃなかったっけ?」
と、コレはキリーさんに視線を向けながら。
やはり薬に悪いイメージが付きまとっているのか、気がすすまないのだろう。
まあ分かる。
「そうだけど……とりあえず、成功してるかどうか、確認したくて」
飲めば、火と草の属性が、参照術を用いた時のように体内に宿る。
それが成されなければ、いくら色や匂いや味が改善されていようとも、何の意味もないのだ。
「……は~……分かったわよ。
アンタ、不味かったらすぐに追い出すから」
そう僕を脅して覚悟を決めたのか、いつものように水の入ったコップを傍に用意して、小さな瓶の中身をグイッと呷った。
最初からこの翌朝部分から書けていれば、味の感想を言うところまで進めることが出来た可能性がちょっとある。
本当に配分失敗しましたわ……。