混ぜながら出来ること
「でも半日間混ぜ続けるのは良いんですけど、このランプって半日間点いてるんですか?」
「問題ない。
上から押さえつけて火を消そうとしたり、私が参照術を解除しない限りは消えない」
「それって……燃料的なものとかも大丈夫なんですか? その……キリーさんの根本のようなものが使われていったりとか……」
「そういうのは無い。あくまでも今、そのランプの中身と私の根本が『燃える』ことで同じなだけ。
でも私の根本は燃料などで『燃える』ものじゃないから何も起きなくて、その石は元々が火属性だから『燃える』だけ。
その液体もあくまで、火の勢いを強くしすぎないようにする調節役みたいなもの」
つまりこの液体は、アルコールみたいに燃料として消耗していくものではない、と。
……ってことは実質、この世界の燃料って枯渇することないってことじゃ……? すごいな……。
「ちなみにだけど、温泉水を持って帰ってくる時も、参照術を使って腐るのを遅らせてた。
さすがにずっとは出来ないから、この部屋に持って帰ってきてからは解除して、氷の地下室に入れて保管してる」
「氷の地下室?」
「水属性の参照術が得意な友達にいるの。その子に報酬と引き替えにね」
冷凍庫みたいなもんだろうか……? ってことは使ってる温泉水がそれなりに生温かったのは、火の参照術で温め直したとかだろう。
なんか、よくあるファンタジー世界かと思ってたけど、文化レベルが十分高い気がする。
「キリーさん、何かこう、参照術について書かれてる本とかありませんか? どうせだから勉強しておきたくて」
時折かき混ぜるだけなので、何も集中してこの大きなガラス容器の中身を見ておく必要はない。
温泉水とミルクが半々のものを無理矢理九:一にしたせいで、かなりの量になってしまった。
おかげ様でランプも三つ使うことになったが、だからといってやることが増える訳でもない。
「……そういう子供向けなものはこの部屋にはない」
こ、子供向けなのか……。
「それにそういうことなら、私が教えられる。
あなたは他にも、そのあなたしか読めない本とかを読んでいって欲しい」
「……分かりました」
まあ、言われてみれば確かにそうだ。
子供が学ぶようなことを改めて目の前で勉強されるぐらいなら、妹が助かるかもしれない、自分が読めない本を読んでもらったほうが良いに決まってる。
分からないことはキリーさんに聞けば良いだけだし、コチラとしてもその方が話すキッカケにもなる。
という訳で、さっきはパラパラと捲って飛ばしてしまった、本の最初の方から目を通していく。
時折容器の中身をかき混ぜるのも忘れない。
グツグツと小さく煮込み続ける音は料理を思わせるが、色はホットミルクのようなのに、匂いはちょっと鼻につく。
料理とは程遠い。
「……ん?」
この最初のページの三種類……今からでも作れるかも。
「キリーさん。ランプって他にもありますか?」
「あるけど……あと二つしかない」
「じゃあ、それをお願いします」
「どうしたの? 何か間違いでもあった? 火力が足らない?」
「いえ、この作業をしながらでも、できそうなことがあったので。早速試してみたいんです」
ヤバい……しばらくこんなシーンが続きそうならマジでヤバい。
設定厨の悪いところが出てるからな……削れそうなら削りたいが……。