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病弱少年の異世界転生~やれなかったことをやるための物語~  作者: ◆smf.0Bn91U
プロローグ:世界に留まるキッカケを
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初めての作成

「さて……」


 夕方頃、キリーさんに渡されたあの本を改めて手に取り、例のページを捲る。

 ……と、キリーさんがまだいることに気付いた。


「いてくれるんですか?」

「当たり前。ここには私が作ったものや集めた材料がある。

 それに、アキラは参照術が使えないでしょ? ということは火も点けられないじゃない。

 材料だって分からないだろうから、私の補助は必要でしょ?」


 全くもってその通りだった。


「助かります」

「私の妹のことだもの。当然」


 正しいかどうかも分からない辞書を片手に読み解くには時間も掛かるだろうし、僕自身が自動翻訳になったつもりでも良いかもしれない。


「それで、必要なものはこれで合ってるんでしょ?」


 部屋の中央にある大きなテーブルの上に、おそらくは今までキリーさんが使っていたのであろう材料を並べていく。

 温泉水を詰めた瓶・少量のミルク。

 たったこれだけ。


「……この温泉水というが、火の属性が付与された液体、で良いんですよね?」

「ええ。色々と探した結果、これしか無かったの」

「う~ん……じゃあ大丈夫ですね」


 ちょっとした引っ掛かりを覚えたが、まあ条件は満たしてるだろうから大丈夫だろう。


「で、コレを混ぜて煮込むだけよね?」

「そうですね……。

 これって、今までのキリーさんの作り方ですよね?」

「ええ」

「だとしたら、一体全体どうして、キリーさんが作るものがこうも別のものになったんでしょうか」


 材料も間違えていないし、言ってる作り方も間違えていない。

 なのに何故かあの完成品は、この本に書かれているような無味無臭になっていない。


「……もしかして、この本の通りに作っても、書いてある通りにならないのかも……」

「そうなの?」

「あ、いえ」


 つい、考え事が口をついてしまった。

 入院ばかりで独り言が多かったせいで、つい集中したらやってしまった。


「とりあえず、試しにキリーさんが作ってみてくれませんか? 何が違うのか確認してみたいので」

「分かった」


 テーブルの下に手を突っ込んでアルコールランプのようなものを取り出す。

 しかしその中に詰まっているのはアルコールではないのか、紅色だった。しかもその底には小石のようなものが敷き詰められている。


 その石が──ランプの底面が少し赤く輝いて、僕が知るアルコールランプのような小さな火が灯された。


 これも参照術か。

 だからキリーさんは自身がいないと火が点かないって言ったのか。


 そのランプの上に三脚台・金網を置いて、ビーカーをセットし、その中に用意してくれた中身を注ぐ。


「あっ!」

「ん?」


 両方ともを全部注いだところで、書いてあることと違う点に気付いた。


「分量を量らないんですかっ!?」

「分量?」


 そうか……ここがキリーさんの読めなかった本の部分か。


「この本には、分量が九:一ってなってます。それだと半々なのでだいぶ違いますよ」

「そうなの? まあ大丈夫よ」

「いや大丈夫じゃないからあんな異臭してるんじゃないですか?」


 僕の指摘にちょっと不服そう。


「……量が違う程度でそこまで変わるものなの?」

「いや変わりますよ……僕も詳しくはないですけど、確かお菓子とか作るのって分量がちゃんとしていないとかなり味が変わるらしいですし」

「味が変わるだけなのよね?」

「その変わった味が不味いから正しく作ってみたい、ってのが始まりなので……」

「……う~ん……」

「あんな異臭を放つものを、せめて本に書いてる通りの無味無臭に出来れば、妹さんの身体への負担も軽くなると思いますよ」

「……分かった」


 何この渋々感。

 ……なぁんかこの、分量とか適当で大丈夫と思ってるところとかが、妹さんに料理が下手って言われる原因なんだろうなぁ……。

 もしかしてだけど、不必要と思ったから、分量を訳さなかった可能性すらあるレベルだ。


「ともかく、作り直しましょう」

「じゃあ、コレ捨てる?」


 ビーカーに並々注がれた液体を指差し確認され──


「──ってそんなに淹れたんですかっ!?」

「ええ」


 もうそろそろ表面張力が発動するんじゃないかってぐらいギリギリじゃないか……これ工程の中に、かき混ぜる、ってのがあるんだけど……ほぼ無理じゃないか。


 持って帰ってきていた温泉水は、今使っているビーカーの半分ぐらいの大きさの瓶に詰まっていた。

 それを全て移した上に、ミルクを注いで並々……ということは五:五か……だったら──


「──そのビーカーよりも大きな、火にかけても大丈夫な器はありませんか? その中に移してもらった後、温泉水を足します。それで九:一にしましょう」


 えっと確か計算式は……と頭の中でどれぐらいの分量にしたら良いかを考えていく。

 算数の世界だから、小学校を三年生ぐらいまでしか満足に通っていなかった僕でも出来るはずだ。


「じゃあ、分量通りにしたら、後は煮詰まるまで待つだけね」

「いえ、半日間かき混ぜ続けますからね?」

「えっ?」


 なるほどそれを知らなかったからこんな並々……大量に作ったら手間が省けるから、とか考えてそうだ。

 これは……中々……。

 キリーさんって、結構ポンコツ成分強めだったんだなぁ……。

 めっちゃ遅くなった分多くなった。

 設定厨の悪いところが出てきてるせいなんだよなぁ……。


 そしてこんな中途半端ながら、明日はちょっと更新できないです。

 また明後日に。

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