ただただ恥ずかしくて、気まずい話
「……っ!!」
何も、言葉が返せなかった。
まさかこんな、可愛いことを、直接的に言われるだなんて、思ってもいなかったから。
自分でも分かる。
今の僕は、顔が真っ赤だ。
「そ、それじゃあ早速なんでしゅが」
恥ずかしい。噛んでしまった。
キリーさんも珍しくクスクスと笑っている。可愛い。
じゃなくて、もっと顔が熱くなるのが分かる。今度は別の意味になってしまったが。
暑い。汗がダラダラと出てくる。
おそらく冷や汗だろう。暑いのに冷たい汗とはコレ如何に。
でもなくて……ヤバい。動揺してる。
僕をこうした張本人たるキリーさんは大人の余裕でいるというのに。
「……す~……はぁ~……」
一つ、深く吸って、全てを吐き出して……自分の中の動揺をゼロにする。
「……話を戻しますけど」
顔は熱いままだし出てきた汗は気持ち悪いけれど、一応は落ち着けたと、我ながら思う。
「早速、このページのものを作ってみて良いですか?」
「このページ……というと、いつもルーに飲ませてる薬?」
「はい。本来は無味無臭みたいなので、飲みやすくはなるかと。
ただこうなると、飲み終わった後に水で流し込んでしまうと、効果はなくなるようですが」
それでも今みたいに、水で流し込めるけれど臭くてマズい、よりは遥かにマシになるはずだ。
「……そうね……本当にちゃんと読めてるかどうかの確認もしたいし、ちょうど良いかもしれない。
もし失敗してても効果もさして悪くならないだろうから、お願い」
お願い、とは言うが、これは謂わば「試験」のようなものと思っていい。
ここで効果通りのものが完成しなければ──本とは別のものか、今妹さんが飲んでいるものよりマズいものや効果が弱いものが出来れば、僕のエゴを叶える機会が無くなるだろう。
「でも、一旦止めようか」
「え?」
「先にルーが作ってくれるご飯食べよ」
窓の外を見ながらのその言葉に釣られ見ると、既に夕日が射し込んでいた。
この家に着いたのが昼をかなり回っていたことを思うと、確かに時間的にはこんなものだろう。
……と、近くから水を汲む音が聞こえる。
そう言えばさっきは見つけられなかったが、この小屋の近くに井戸でもあるのだろう。
僕とキリーさんと妹さんしかいないのなら、水を汲んでいるのは妹さんしかいない。
「それにしても、寝てから起きるまでが早くないですか?」
「いつもこんなものよ。私がご飯を作れないから、代わりに作るために無理して起きてるの」
「キリーさん、料理できないんですか?」
「悪い?」
「いえ……」
なんか、妙な威圧感が……料理出来ないことを気にしてるのだろうか?
どうせ僕も出来ないから気にする必要もないと思うけど。
……いやもしかして、料理下手なのが影響して、上手く薬を作れないとか……?
「でも、ここに来るまでの干し肉とか保存食とかは……」
「街で買ったものだから」
ですよね。