忘れられがちな異世界人設定
だいぶ遅くなりましたが、おかげでちょっと長くなりました。
……ほとんどが設定厨のソレが出てるんですけどね。
「参照術っていうのは、私達の中にある本質を、周りにある属性と同じにすることから始まるの」
窓がある右手側の奥にある本棚へと向かいながら、キリーさんが教えてくれる。
「例えば火属性」
コツン、と床の上に転がっていた石に、足を軽く当てる。
「ここにある石はどういう訳か『火の属性』を持っている。
今の私の本質は何もない。
だから、この石を参照して、私の本質を同じにする」
「あ……」
キリーさんの周りが赤く輝く。
窓から射す光しか光源がなかったからか、昼過ぎであってもその輝きが一際大きく見えた。
それでもそれが、あの山やさっき妹さんにかけた時に見たものと同じということは分かった。
「これで、私の本質は火になった。
そして同じ本質のものは、同調することも出来る。
だからいきなり──」
と、先程足を当てて所在を教えてくれたその石を、今度はつま先を巧みに操り、上に蹴り上げる。
よく見てみれば、それもまた同じように赤く輝いていた。
「──こうして、手も触れずに燃やせる」
言うや否や、石の周りに火が纏われた。
この小屋が燃えるほどではなく、本当に軽く火が見える程度のもので、足元に戻るまでの間に消えてしまうほど小さなものだったが、間違いなくソレは燃えていた。
「これは、私とこの石の本質が同調して同じになったので、この石だけを燃やす、といった命令を与えることで、実現することが出来るようになった形」
「じゃあ、もしこの石にも同じように、キリーさんを燃やすという意思があったら……」
「私のほうが燃えるかもしれないし、意思を上回ったほうが叶えられるかもしれない」
「かもしれない……?」
「されている、が正しいかもだけど。
そうしたことの実証実験がないから」
はい、と本棚の前に立ったキリーさんが一冊の本を抜き出し、こちらに差し出す。
渡された本をパラりと捲りながら、キリーさんの言葉に耳を傾ける。
「私達のこの参照術は、人同士では行なえないの。
もしかしたら元々、意思があるものの属性を参照できないようにしてるのかもしれない」
「それも、かもしれない、ですか」
言いながらパラパラとページを捲っていると、参照術というのが未だ解明されていない学問の一つということが書かれていた。
それでも当たり前のことのように広まっているのは、未完成で解明されていない代物であろうと──分かっている範囲を使えるだけで、かなり便利だからだろう。
僕の世界でも似たようなことがある。
発明されて分かっている範囲で使っていたら、実は地球に悪影響を与えることが分かったから使用を禁止するようになった、とか。
「だから、あの温泉水を加工したものを、妹に飲ませた上で、参照術をかけてるの」
「ん……? それ、だから、に繋がります?」
「妹は今、参照術が使えない。
だから彼女の体内に無理やり火の属性と草の属性を入れた上で、その属性と私が同調し・活性化させて、体内の浄化を行ってる」
「それは……浄化の参照術が、火と草の属性として必要だから、ってことですか?」
「ええ」
と、ななめ読みしていた本の中で、一つのページが目に留まった。
「……もしかして、キリーさんが作ってるのってコレですか?」
「え?」
図解が入るようになったページの、割りと最初の方。
必要な材料と作り方が書かれたそこを見るために、彼女が僕の横に並ぶ。
何故か草花のめちゃくちゃ良い匂いがした。
「飲ませた相手の体内に火と草の属性を付与する……って書いて──」
そこまで読んだところで、違うか、と気付く。
「──いや、これ味は無味に等しくなるし匂いもほぼしなくなるって書いてますね。じゃあ違──」
「アキラ……あなた、コレが読めるの……!?」
僕の言葉を止めてまで、キリーさんが訊ねてくるので……驚きながらも、思わず頷く。
それに今度はキリーさんが驚きながらも……でも、瞳を閉じて一呼吸置いてから、話してくれた。
「これ──この文字は、失われた文字と文章で書かれてるから、私でも読めないの」
瞬間、しまった、と何故か思ってしまったが、次に言われた言葉で、そんなことを思う意味が無かったことに気付いた。
「やっぱり……あなたが、この世界の人じゃないから、コレを読めたの?」
なんせ、そもそも内緒にしているつもりも無かったのだから。
やっと話の本筋にいけたかなぁ、と思わないでもない。
そもそも見直した上で投稿する形なら、下山シーンで一週間分も使わないんだよなぁ……。
その日その日で書いた分を投下すると無駄が多くなるということが分かった。
そんな訳ではありませんが、明日は更新をお休みします。