妹さんとの話
「キリーさんのこと、好きなんですね」
「うっさい黙れ」
強い言葉だけど、否定しなかったことが肯定の証のようにも思えた。
なんせさっき、目尻が濡れているのを見てしまった訳だし。
「そんな話ばっかするんなら、あたしはあんたの話とか聞かないから。さっさと本題を話しなさいよ」
「本題?」
「ずっと寝込んでた病気だったのに今は歩き回ってるんでしょ? その話しして欲しいってお姉ちゃんに言われたんじゃないの?
あ、でもその前に、一体どうやってお姉ちゃんにあそこまで信頼されたの?」
「それは逆に僕が知りたい」
という訳で、キリーさんが望んでいるだろう僕の話をしようかと思い、色々と考えをまとめる。
とは言っても、話すことなんてほとんどない。なんせ病名すら不明だったのだから。
常に付きまとう倦怠感と、時たま訪れる、立ち上がることも座ってられることも出来ない筋肉弛緩。
そうなったら呼吸すらもままならず、浅い呼吸を繰り返して何とか生き永らえていられるような、突如死の淵へと追いやられた絶望感に支配されていた。
「いや、病気自慢されたところでさ」
そういった症状だったことを話したところで、妹さんにはそう、あっさりと一蹴された。
「そもそもそれが本当だって証拠も無いんだし。
今日、ついさっき会ったあたしとしては、ココに来るまでに一人で話を固めてたって言われる方が信じるレベルなのよ」
……まあ、そう思われても仕方がないだろうけど……あんなに辛い思いをしていたコチラとしては、そんな感じで言われていい気分なんてしない。
「あ、いやまあ、ちょっと言い過ぎた」
表情に出てしまったのか、すぐに謝ってもらえた。
根っこはキリーさんと同じで、優しい子なのだろう。
「でもさ、今はそんなに服が破れるぐらい動き回れるのってどういうこと? って感じなの」
「あ……」
しまった。
そうだった。
僕はこうして、異世界に来た時に、何故かその病気が無くなったけれど、彼女は現在進行系で、寝ていないといけない病気になっているのだ。
病気が治って元気に歩き回って、入院着を泥で汚している人がいきなりやってきて、こんなに辛い病気だったけど今は元気なんだよ、なんて話をされても、いい気分なんてするはずがない。
「こちらこそごめん。
話す内容を間違えた」
僕は治ったんだから諦めるな。
希望を捨てるな。
お前もいつかこうして元気になるはずだ。
そんな、治った立場からの言葉なんて、何の意味もない。
それこそ、そんなことは僕が一番、分かっていたはずだ。
「妹さんのは、どういう病気なの? 良かったら聞かせてもらえないですか?」
「知らない」
「知らない?」
「だって、医者になんて診てもらったことないし」
なんか余計な方向に話が向きそうだったのでちょっと修正したら短くなったな……。
でも主人公がどういう病気だったのかは本筋じゃないしなぁ……転生前の世界の話をしっかりされても無意味感あるし、多分これで間違えていないはず。