魔物とは
日が傾き、夕日すらも消えて、そろそろ夜空が広がろうかという、夕と夜の隙間のような時間。
背後に森を従えて、一匹の四足動物が現れた。
「……オオカミ?」
その姿を見た僕の第一印象がソレだ。
アレが本当に魔物なのだろうか……?
「確かに……アレはオオカミね」
「あれ?」
警戒を解き呟くキリーさんを、つい見てしまう。
「……間違えたのよ」
あっさりと、平然と言っているけれど……これは照れているのかもしれない。
これ以上掘るのは止めておこう。
からかったら可愛い反応がきそうだけど。
「アレは普通のオオカミだから、縄張りに入らなければ大丈夫。
少し遠回りしていきましょう」
言って、森を回り込むように歩き始めるので、それに付いていく。
「もしかして、僕が戦えないからって気を遣ってくれました?」
「まさか。下手に争うよりは安全な道を選ぶのは当然でしょ」
なるほど。普通に考えればそりゃそうか。
そもそも人間は、野生動物を相手にすると満足に戦うことも出来ないというのを聞いたことがあるし。
「でも、キリーさんでも動物と魔物を間違えることがあるんですね」
「……からかってる?」
「あ、いえ! そういうつもりじゃなくて……!」
からかわないと決めたのに間違えた……!
「ただ、動物と魔物ってどう違うのかなぁ、と思って」
「……まあ、そうね。一般的には外見の話よ。
普通の動物と魔物は、外見からして異形だもの」
う~ん……その判断基準だと、もし僕の世界にいない動物が出てきたら分からなくなるな~……。
「ただ学術的には、魔物は交配以外の手段で繁殖するものを指してるの」
「交配以外……? そんな方法あるんですか?」
「自然発生とか、そういうのよ。
こればっかりは原理が解明されてないからなんとも──」
その、続く言葉を紡ぐより先に……キリーさんが剣を抜いた。
「っ!」
そして驚く僕を押しのけて、その背後に向かって、刃を下から上へと撫でるように振るう。
ギィン……!
と響く鈍い音。
チラりと映った視界の端には……キリーさんが繰り出した剣を喰らう、さっきのオオカミが見えた。
……いや、違う。
さっきのオオカミはまだ、森の入口からこちらの様子を窺っている。
だからこれは……また別の存在だ……!
難産……!
正直ここで戦闘シーンを入れたくないからかなり迷ってしまった……結局書いてるんだけど。
今回はあんまり戦闘シーンがないのを書きたいと思ってるからなぁ……そりゃファンタジーだし戦闘はあるだろうけど、出来ればいつもみたいに冗長なシーン描写を入れたくないというか……。
う~ん……失敗したかも。