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病弱少年の異世界転生~やれなかったことをやるための物語~  作者: ◆smf.0Bn91U
プロローグ:世界に留まるキッカケを
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下山途中

 山を下り始めてしばらくして、自分の身体の違和感に気がついた。


「そろそろ休憩する?」


 歩いて数十分も経っていないのに、前を歩いていたキリーさんが振り返り、こちらを見上げながら訊ねてくれる。

 僕はそれに首を振る。


「いえ、まだ大丈夫です」

「でも、さっきはこれぐらいの距離を歩いたら倒れちゃったし」

「それが、全然疲れていないんです」


 本当のことを言ったのに、怪訝な顔を浮かべられる。


「本当に?」

「本当です」

「……アキラは、倒れるまで無茶をするから」

「僕もそういう自分を自覚はしてますけど……でも今回ばかりは本当です」


 なんというか、体力切れで倒れる気がしない。


 これは強がりでもなんでもなく、確信だ。


 お前は歩くだけなら倒れないぞと、とても信頼できる人に言われたような……そしてそれが事実だと、まるで一度確認したかのような、そんな感覚があるのだ。


 それに──


「……? どうかした?」


 ジッと、キリーさんを見つめていると、小首を傾げることもせず、探るような瞳のままに問いかけられた。


「やっぱりしんどいんじゃない?」


 ──その言葉を、改めてじっくりと聞くと、僕の全く分からない言葉が聞こえるのだ。

 意識しなければ全く分からない程、小さくだけど。


 ただ、本当に声が小さい訳ではない。

 テレビのボリュームが絞られている感じというよりも、誰かとの話に夢中になっていたせいで聞いていなかった、という方が近いだろうか。


 で、その「誰かとの話」というのが、僕にも分かる言葉で話してくれている、キリーさん自身の声ということになる。


 なんというかさっきまでの会話は、耳で聞いているというより、頭で聞いていたのかもしれない。

 そんな感覚があるのだ。

 まあ、意識しなければ普通に会話できているということなので、特に気にする必要もないのだろうが。


 ……さっき気絶した時に、何かおかしなことになったのだろうか……?


「……はっ!」


 ふと、自分の視界の端に何か映っていないかを確認する。

 顔を動かすのではなく、視線だけを動かす感じ。


「……アキラ?」


 その視界の四角には、何も映っていない。


 ……ふむ……。


 ならばと、手を前に突き出したり、下から上へと持ち上げるような動作をしたり、何か開けるような指の動きをしたりする。


 ……が、これにも無反応。


 ……おかしい……異世界転生ものなら、こういう感じのことをすれば能力画面が見れたりしたはずなのに……それともテレビゲームをやったことがないせいで、僕が上手くイメージできていないのか? いやでも、マンガでならいくらでも……。


「とりあえず休もうか、アキラ」

「あ、いえ! 大丈夫! 大丈夫なんでキリーさんっ!」




◇ ◇ ◇




 僕のおかしな動きと、心配してくれていたキリーさんの話を聞かなかったせいで、数分間の休憩を強いられた。

 やっぱりキリーさんは優しすぎるなぁ……と、前を歩く彼女を見下ろす。

 背は圧倒的に高いのに、こうして先導されて下山している時だけは、彼女を見下ろす形になるから不思議だ。

 今まで山なんて登ったことも無いからなぁ……。


 ……ふと、その背負っているカゴの中身が気になった。


「キリーさん」

「どうしたの? 休憩?」

「ではなくて、そのカゴの中に入ってる液体の瓶って、なんですか?」


 休憩中とかに飲ませてもらっている水が入った水筒は、彼女が腰にぶら下げてある。

 ちなみに剣は横で、水筒がカゴの底である背中側。剣の逆側にはサバイバルナイフが数本刺さっている、という形だ。


「これは温泉水よ」


 歩くことを止めずに、こちらを軽く見てから答えてくれる。

 本当に僕が疲れていないかの確認をしたのかもしれない。


「温泉水って、僕がいた場所の、ですよね」

「ええ。この山の山頂付近の、あの温泉水」

「どうしてそれが必要なんですか?」

「これのおかげで、妹の病状を遅らせることが出来ているから」

 よくあるステータスウインドウやスキルが分かるシステムの否定をしておきたい。そんなこだわりで一話を使うバカはこちらです。


 まだヒロインと主人公以外誰も出てきてないくせに、明日は更新お休みさせてもらいます。

 来週こそはもうちょい登場人物増やしたいですね。ヒロインの妹とか。

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