当面の目標
「……僕は……僕が出来ることで、誰かを救いたかったんだ……」
ずっとずっと、誰かに守られてばかりだったから。
「…………?」
……どうして、目が覚めた途端、いきなりそんなことを呟いたのか。
自分でも全く分からなかった。
「…………」
いつの間に眠っていたのか。
……いや、気絶していたのか。
記憶がプッツリと途切れている。
「どれぐらい休んでました?」
「ほんの数分ほどよ」
隣に座って待っていてくれたキリーさんに訊ねると、どこか気まずそうに返事をくれた。
「その……ごめんなさい」
そしてそのまま、何故か謝られてしまった。
「あなたの事情を知らないのに、色々余計なことを言い過ぎた」
「余計なこと?」
「……病気で入院してたのに、親の脛かじりみたいなことを言ってしまった」
「ああ……いえ、そんな風に思われても仕方がない言い方をしたのは僕なんで。
優しいあなたに、気を使わせないつもりだったんですけど……逆に失敗しちゃいましたね」
そう言って苦笑いを浮かべる僕に、
「ううん。言ってくれて良かった」
と返された。
「あなたが、あなた自身のことを話してくれたから、私はあなたをちゃんと、助けようと思えた。
あそこで話してくれなかったらきっと、私はアキラを、ちゃんと助けようと思えなかった」
「その方が良かったんですけどね。
だってキリーさんにちゃんと助けられちゃうと、その優しさにもたれかかってしまいそうで」
僕はそれがイヤだった。
だから最初は誤魔化そうとして、自分が悪く見られても構わないような言い方をした。
結局、回らない頭では上手くいかなかったけど。
入院生活の時もずっと、看護師さんに助けてもらってばかりだった。
それが本当に、申し訳なくて。
自分は何も出来ないのに、助けてもらってばっかりで。
「だったら、街に行く前に、私の妹に会って欲しい」
「え?」
何が、だったら、なのだろうか。
「アキラは、自分が出来ることで、誰かを救いたいんでしょ? さっきそう言ってた」
目が覚めた時のことか。
「だから、妹に会ってほしいの。
それで十分、私に優しさを返してくれてることになる。
そしたら、もたれかかってることにならないでしょ?」
「……なんでそうなるんですか?」
「私の妹も、昔のあなたみたいに、今は出歩けないから」
「…………」
それを聞いて、何と返せば良いのやら。
僕には分からなかった。
ただ、一つ分かったことがある。
それは──
「それってつまり、自分のことだけじゃなくて、僕の望みも叶えようとしてくれてる、ってことですよね?」
──結局キリーさんは優しすぎるし、結局僕はそれにもたれかかってしまっている、ということだ。
さすがにそろそろ下山スピードを上げないとなっ!(何度目?




