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#13【完全迷子】私、どうしたら良いんでしょうか? (2)

【前回までのあらすじ】

ライブの振り返り雑談で、

リスナーに尋ねられた『次の目標』に

答えられなかった桐子。


今日はコラボ配信のようで――。


1話目はここから!

 https://ncode.syosetu.com/n8859fb/1/


更新情報は『高橋右手』ツイッターから!

 https://twitter.com/takahashi_right

「お願いします! やめてくださいぃいいい!」


 土曜日の昼下がり、地下スタジオに涙目で懇願する桐子の悲鳴が響き渡る。

 しかし、無情にも運命のサイコロは盤上を踊る。


 6、3、5、6、4、5、6、4、5、6


「おっきすぎるぅうううう! ふぎゃっ!」


 反り返った拍子に、桐子は座っている椅子から倒れそうになってさらにびっくりしてしまう。

 すぐ隣で一緒にゲームをプレイしている夜川さんが咄嗟に口の開いたペットボトルを掴んでいなかったら、大惨事になっていたところだ。


『ゲッヘッヘ! 50だな! 39億2800万円を捨ててやるぞ! よろこべ!』


〈草〉〈草〉〈なにさっきの声〉〈猫かなw〉〈39億w〉〈マジでw〉〈どうして……〉〈これはツイてない〉〈草〉〈www〉〈不運の灰姫〉〈さすがにw〉〈泣いていいよ〉


 配信のコメント欄も転がるサイコロのように目まぐるしく流れていく。


「やめてやめてやめてぇええええ! いやぁああああああ! 死んじゃうぅううううう!」


 この世の終わりかのような叫び声を上げるが、ゲームの非情なルールは変わらない。売れる物件はすでに無い。『レラ社長の 持ち金は -101億3520万円!』となり、借金100億円の大台を突破してしまった。


「あははっ、レラちゃんのキングバンビーは勤勉だねー」


 さっきまでミニバンビーと戯れていた夜川さんも耐えられないと笑ってしまっていた。

 灰姫レラとナイトテールが二人(+CPU)でプレイしているのは、最新作が発売されたばかりの金太郎電鉄。サイコロを振って全国の目的地を目指しながら資産を増やしていく定番のパーティゲームだ。オンラインでコラボすることも出来て、波乱万丈の展開や大逆転もありで撮れ高も期待できて、配信でプレイしているVチューバーも大勢いる。

 夜川さんは家にプレイ環境(ゲーム機本体)が無いので、二人でスタジオコラボ配信となった。

 短期決戦の3年モードだ。序盤はCPUがリードするも、運を味方につけたレラ社長が荒稼ぎ、総資産は200億円を突破した。

 圧倒的なリードで迎えた最後の年。悲劇は4月に起きた。お邪魔キャラの疫病神が最終形態に進化。取り憑いていたレラ社長の物件を次々に粉砕し、借金まみれにしたのだった。


「それじゃ、あたしは特急カードを使って」


 サイコロを振るナイトテール社長。


「12マス進んで……あっ、着いちゃった」


 目的地に到着して11億円を手に入れたナイトテール社長。そして疫病神が取り憑くのは、当然のようにレラ社長だ。


「もう無理ぃ」

「萎れたレラちゃんも味があっていいじゃん♪」


 力なくうなだれる桐子の頭を、夜川さんがよしよしと撫でた。夜川さんの方が身長も高く手足もスラリとしているから、まるで駄々をこねる妹をあやす姉のようだ。

 そこからゲーム内での3ヶ月、疫病神を抱えたままのレラ社長が借金100億を返せるわけもなく、3年決戦が終わる。

 そして結果発表だ。


「さ、さあ、最下位は誰でしょうか!」


 桐子はどうにか最後も盛り上げなければと無理やりテンションを上げたけれど、コメントは〈知ってる〉で埋まっていた。

 案の定、レラ社長がビリで、ナイトテール社長が2位、一位はCPUだった。


「やっぱしさー、ノリで最強CPUを選んじゃダメだね」


 自分は2位で締まらない結果だけれど、最初から最後までゲームを楽しんだ夜川さんは満足そうに笑っていた。


「うぅ、途中まではトップだったのに」


 それに引き替え、桐子は悔しさたっぷりにコントローラーを握りしめていた。夜川さんに格好いいところが見せたくて、練習をしてきたのにあまりにも不甲斐ない結果だ。

 3年間の資産変動が折れ線グラフで表示される。途中までトップを独走していたレラ社長だが、最後に華厳の滝のように急転直下でビリになっている。現実の会社なら粉飾決算でもしていたとしか思えない落ち込みようだった。


「みなさん、どうだったでしょうか……」


 完全敗北のショックから立ち直れていない桐子が配信を見ている人達にたずねる。


〈最高!〉〈面白かった〉〈良かったです〉〈GOOOOD!〉〈オフまたみたい〉〈3年じゃ短い!〉〈どの配信も金鉄ばっかでつまらない〉〈楽しかった!〉〈次もお願い!〉〈小田原壊滅めっちゃ笑った〉


 概ね好評のようだ。


「あたしはこのゲーム初めてだったけど、レラちゃんと遊べてホントによかったよー!」


 今回のオフコラボは夜川さん(ナイトテール)の発案で、彼女のチャンネルで配信している。


「調子に乗ったレラちゃんはカワイイし、ボコボコにされたレラちゃんですっごい笑ってお腹痛いぐらい!」

「あぅ、ゲームでは負けてしまいましたが、私もすっごく楽しかったです!」


 借金100億円という散々な結果でも、笑顔で終われたのはゲームの面白さはもちろん、ナイトテールとゲームをプレイ出来たからだ。


「一台のモニターの前で、隣同士に座って、こうやってゲームをする……オフコラボってずっと夢だったんです」


 ハイプロみたいな大手の事務所や、個人でも社交性のあるVチューバーさんがオフコラボをしているのを羨ましく見ていた。陰キャでコミュ障な自分には縁がないことだろうと思いながらも、どんなゲームをしたら盛り上がるか、ゲーム後に一緒にご飯を食べに行ったりなんて妄想だけは沢山していた。

 そんな夢がまた一つ叶ったのだから、Vチューバーをしていて本当に良かった。


「またやりたいよねー!」


 ナイトテールとして夜川さんがそう言ってくれたのが、なにより嬉しかった


「私もです、2時間じゃ全然足りません!」

「定期的になんかしたいなー」

「はい! ラ、ラジオとかどうでしょうか!?」


 夜川さんがノッてくれたのが嬉しくて、桐子は思わず椅子から立ち上がっていた。


「面白そー! Vチューバーっぽくてなんかイイよね!」

「裏で企画しましょう!」


 話は盛り上がるけれど、そろそろ終了の予定時刻だ。夜川さんが桐子に目配せをする。


「はーい、次回の予定っぽいのも決まったし今日はこんなとこかな。みんな、最後まで見てくれてあんがとねー」


 楽しい時間が終わるのは寂しいけれど、『次』を考えればワクワクに変えられる。


「あっ! 終わり挨拶はどうしょっか?」

「え、あ、えっと……ナイトテールちゃんのチャンネルだから、おつしっぽでいいんじゃないでしょうか」


 少し躊躇ってから桐子は答えた。


「え~、せっかくなんだしさー、コラボっぽいのにしよ」

「じゃあ、その……おつデレラと合わせて、おつデレールで……あっ、やっぱりなしで! ダサいですよね……」


 実は二人用のコラボタグや挨拶も考えていたのだけれど、桐子の引っ込み思案が炸裂して提案が出来ないでいた。


「おつデレール、いいじゃん。ツンデレっぽくて、カワイイって!」


 本当に大丈夫なのかと心配する暇もなく、夜川さんはカメラ(リスナーさんたち)に向かって両手を広げる。


「それじゃみんなも一緒に、おつデレール!」

「おづ、おつデレール!」


 タイミングが思いっきりズレたうえに噛んでしまう桐子だった。


「あはははっ、レラちゃんはもー」


 配信ではエンディングに被さる形で、ナイトテールの笑い声がフェードアウトしていく。

 そして、完全に音声が消えるかと思ったところで、唐突に音声ボリュームが大きくなった。


「あっ! 概要欄に灰姫レラちゃんのチャンネルとTwitterも貼ってあるので、登録がまだの人は是非おねがいねー!」


 コメント欄では、リスナーのみんなが〈おつデレール〉の言葉で二人を見送っていた。


「二人ともお疲れ様。配信は切れたよ」


 椅子のキャスターを滑らせながら、河本くんが手を上げていた。今日のオフコラボは、ゲームのキャプチャー設定から配信中のOBS操作まで、河本くんが全て担当してくれた。


「お疲れ様でした」

「おつかれー!」


 肩の力を抜く桐子。配信は楽しいけれど、やはり緊張感もある。喋りながらゲームをしているだけなのに、配信が終わって一息つくと、遠足帰りの電車の中みたいにどっと疲労感が押し寄せてくる。何十時間も耐久配信する人たちの体力はどうなっているのか、想像もつかない。


「んっ、ん~~~、おなかペコペコ!」


 横を見ると夜川さんも腕を上げて、大きく伸びをしていた。お喋り上手の夜川さんでも、やはり体力を使うようだ。

 そして、今日はオフコラボ配信で終わりではない。


「それじゃ、香辻組のライブ打ち上げ始めようか」


 夜川さんの提案で配信の後に、内輪でのライブ打ち上げをすることになっていたのだ。


「はい」

「はーい!」


 休憩スペースに移ると、置いてあったビニール袋の中身をテーブルの上に並べていった。

 ぷりぷり海老にイカのシーフードたっぷりピザに、爆発のエフェクトに使えそうな見事な唐揚げ、厚くてプリッとだし巻き卵、横浜の定番シュウマイ、カリカリベーコンとシャキシャキ野菜のサラダ、こんがりと焼けたチキンレッグがどどんと3本、五目ご飯のお稲荷さん、さらにスナック菓子も三種類。簡易キッチンの小さな冷蔵庫にはケーキも入っている。

 普段は読みかけの本や水差しとコップぐらいしか置いていないテーブルが、今日は大変なことになっていた。


「なんだか凄いことになっちゃいましたね……」


 どう見ても3人では食べきれない量の料理を前に、桐子は数時間前の自分を思い出す。

 打ち上げの食べ物は各自で持ち寄ることになっていた。多少の料理は出来なくもない桐子だけれど、家族以外に食べてもらう自信はない。せっかくなら美味しいものが良いだろうと、スタジオに来る途中に駅のデパ地下的なお惣菜コーナーで調達することにした。『学校の友達同士でパーティ』というアニメやゲームでしか知らない青春イベントに、気負った桐子はテンションに任せて目に付く美味しそうな料理を次々に買ってしまった。


「残ったら河本くんのご飯にすればいいじゃん。普段、カップ麺とかばっかり食べてそうなんだからさー」


 心配いらないと言う夜川さんに、コップを用意していた河本くんは苦笑いを浮かべる。

 夜川さんと河本くんがコーラで、体重が気になってしまった桐子はお茶を選んでコップに注いだ。


「それではー、リーダーの灰姫レラさんから乾杯の挨拶をお願いしまーす!」

「えっ?!」


 唐突に指名された桐子は慌てて、ピザに伸ばしていた手を引っ込める。レンジでチンしたばかりのピザの熱気が尾を引くように離れていった。


「私がですか?! 夜川さんの方が上手いですよ。ナイトテールちゃんもライブに出演したんですし、是非」

「ハイプロライブの正式なゲストは灰姫レラちゃんでしょ。あたしは飛び入り参加だもんねー」


 片眉だけ上げた夜川さんは誰のせいでしょうかと言いたげに、河本くんの方を見ていた。


「あの雰囲気をどうにか出来るのナイトテールしかいなかったからね」

「まったくもー、河本くんは人たらしだね。そういうの、良くないと思いまーす!」


 学級委員っぽさを醸し出して訴える夜川さんだけれど、満更でもなさそうに笑っている。


「余計な前座はこれぐらいにして、香辻さんに一言もらおうか」


 河本くんにまで推されては、桐子もこれ以上は渋れなかった。


「そ、それでは、僭越ながら、一言いわせて頂きます」


 二人の期待の視線に緊張した桐子は背筋を伸ばす。握っていたコップのお茶が大きく揺れて、危うく溢しそうになってしまう。


「えー、本日はお日柄もよく、じゃなくて、あの、えっと……ライブ楽しかったです!」


 真っ白な頭の中から一つの言葉が飛び出すと、大当たりのガチャみたいに連なる感情がぼろぼろと溢れてくる。


「夜川さんと河本くん、二人に支えられて私は最後までステージに立つことが出来ました」


 もちろんハイプロの皆さんがいてこそだけれど、向ける想いは少しだけ違う。ゲスト出演が決まってからの準備期間、そして当日に自分が起こしたトラブル、二人の活躍がなければライブどころか、Vチューバー灰姫レラは終わっていたかもしれない。


「チームみたいに3人でライブに挑めて良かったです」

「うんうん! あの瞬間、あたしたちは世界最強のVチューバーチームだったよねー!」


 夜川さんの大きな言葉を桐子も誇張だとは思わない。河本くんも静かにうなずいていた。


「いたらない私ですが、これからも頑張っていきますので、えっと、だから、その……こ、これからも仲良くしてください!」


 乾杯の挨拶のはずが告白みたいになってしまい、桐子は顔が火照ってしょうがなかった。


「もっちろーん!」


 力強く拳を上げる夜川さんの横で、河本くんは静かに微笑んでいる。


「それで、えっと、えっと、か、乾杯っ!」


 何を言って良いか分からなくなった桐子は、とにかくコップを突き出した。


「乾杯」

「かんぱーーい!」


 二人のコップがコツンと桐子のコップに触れる。響く振動が手から、心臓まで伝わってくるような気がした。


「さっ、食べよー! まずはピザからだね!」

「はい!」


 桐子と夜川さんが手に取った隣り合う1ピースの間で、溶けたチーズがとろりと糸を引く。


「ほらほら、河本くんも食べないと冷めちゃうよー!」


 ちびちびとコーラを飲んでいる河本くんのお皿に、夜川さんがピザや唐揚げを次々とのせていく。


「あ、ありがとう」


 バイキングで取りすぎたみたいになったお皿を前に、河本くんは苦笑していた。

 まずはピザを一口。たっぷりのチーズとトマトソースの酸味とピザ生地の甘み、そられに包まれた大粒のエビがプリッと口の中で弾ける。お昼を過ぎて空っぽになっていたお腹が、これを待っていましたと言っていた。


「このピザ美味しいです! 宅配じゃないですよね?」


 桐子は買ってきた河本くんに尋ねる。CMを流している宅配ピザ店の箱ではなく、無地の簡素な白い箱にピザが入っていた。


「一階のカフェのピザだよ」


 そう言って、河本くんは人差し指で天井を指す。このスタジオが入っているビルは一階がカフェ・バーになっている。もちろん桐子も知っていたけれど、利用したことは今までなかった。


「えっ! こんなに本格的なピザが食べられるんですか!」

「マスターが料理好きなんだ。だからメニューも豊富に取り揃えてる。僕はあまり利用しないけど、人気店みたいだよ」


 口コミ評価をまるで気にしないところが実に河本くんらしかった。


「それならさー、毎日のご飯にも困らないじゃない?」


 河本くんの適当な食生活を最近知った夜川さんが首をかしげる。学校ではコンビニのパンやおにぎりだし、スタジオでも栄養補助食を食べたりしている。豆腐とサバ缶が夕食だとも言っていたので、桐子も何度かそれとなく注意していた。


「いちいち食べに行くのが面倒くさくて……い、一応! 香辻さんに言われて最近はちゃんと栄養のあるものも食べるようにしてるから!」


 桐子の視線に気づいた河本くんは弁解するように言って、唐揚げを食べてみせる。


「んっ? この唐揚げ美味しいね。どこで買ったの?」


 河本くんが端の間の唐揚げを興味深そうに見つめていた。


「あたしが家で作ってきたやつだけどー」


 夜川さんが何気なく答えた。食に興味がない河本くんを驚かせたからあげが気になって、桐子もさっそく一つ食べてみることにした。


「むぐむぐ……んんっ! 美味しい! 肉の繊維に染み込んでるみたいに味がしっかりで! ご飯が食べたくなります!」


 お店で買ってきたと間違えるのも納得のクオリティの激ウマ唐揚げだった。


「お料理上手なんですね!」

「んー、弟のお弁当作ったりするからね。でも、今日は二人に食べてもらうから、いつもよりは頑張っちゃったかな。こっちのだし巻き卵もどーぞ」


 嬉しそうに言う夜川さんに勧めら、二人はだし巻き卵を口に運ぶ。


「!!」

「!!」


 桐子は河本くんと顔を見合わせる。それだけで何を言わんとしているのかがお互いに伝わった。


「今まで食べただし巻き卵の中でダントツで一番美味しいです! 卵の中からお出汁が広がって、うま味って感じです!」

「秘密は白だしと丁寧な裏ごしにあるんだよねー」


 『白だし』や『裏ごし』というパワーワードに、なんちゃって料理専門の桐子はおののくしかなかった。


「夜川さん、凄いね。コンビニ弁当に入ってる卵焼きとはぜんぜん違うよ」

「もうなんで、わざわざコンビニのお弁当と比べるんですか」


 河本くんは褒めてるのだろうけれど、その言葉はさすがに余計だと桐子は突っ込んでいた。

 そんな風にわちゃわちゃと話をしながら、打ち上げパーティは続く。配信の話題になったら3人で料理の食レポの真似事をしたり、体育の授業中に河本くんがこっそりサボっていた事を話したりと話題は尽きなかった。

 そして12月も近いといえば、当然あの話題が挙がってくる。


「来週はもう期末テストだねー」

「本当に早いですね。ついこの前、中間テストをしたばかりだと思ったのに」


 体感ではまだ二週間ぐらいしか経っていない。


「二人とも勉強の方はどう?」


 まったくテストの心配がない河本くんの問いかけに――。


「あたしはいつも通りかな」

「うっ……」


 夜川さんと桐子とで、はっきりと明暗が分かれてしまう。


「河本くんにもお世話になったのに、テストの点数がちょっと心配で……」

「そう? 教えてる感じでは結構出来てたけど」

「サインコサインタンジェントとか出てくると、どれがどれだっけとなっちゃって、最終的には頭の中で歌詞がぐるぐると踊りだして……」


 話していて自分で情けなくて、桐子の声は小さくなっていた。


「じゃ、いま確認しよっか」

「い、今ですか?!」

「分からないことを放っておくと、それが積み重なって先に進めなくなっちゃうからね」


 コップを置いた河本くんはホワイトボードの前に立つ。今日のコラボの進行表を消すと、黒のマーカーでピッピッと十字を描く。


「三角関数で迷った時は、まず座標と円を描いて確認しよう」


 河本くんはそう説明しながら、十字の交点を中心に円を描く。


「三角形isどこですか?」

「こうやって円周上から線を二本引いて三角形を作る。すると、半径rを斜辺とした直角三角形が出来上がるね。中心にあるこの角をθって書くとする」


 三角形に記号を書き込んでいく河本くん。受験勉強系の動画のような手際良さだ。


「三角『関数』って名前通り、この中心角θの大きさの関数なんだ。例えば、sinθはy/rで、cosθはx/rで決められる。ここまでで質問はある?」

「えっと、なんでsinとcosはそうなるんですか?」

「定義、つまりは人間が勝手に決めたんだ。もちろん意味があってのことだよ」


 唐突に始まった勉強会。


「へー、そうなんだ。あたしは感覚で覚えちゃったけど、なんかあるんだね」


 ケーキを食べ終わった夜川さんも参戦し、講義は続いていった。数学だけでなく、夜川さんが現代文で文章の読み方を教えてくれたりした。


「英語も難しいですよね」

「あー、あたしも。特に聞き取りが苦手かな」

「英語圏のVチューバーさんの配信も聞いてるのですが、なかなかテストの点数には結びつきません」


 何でだろうと桐子は首をかしげる。日本で生まれたVチューバーの文化だが、今では英語だけでなくあらゆる言語圏に進出している。


「分からない単語があったらちゃんと調べてる?」


 河本くんが弱点を容赦なく突き刺してくる。


「うっ……時々は……」

「なんとなくで聞き流してるだけだと、なかなか身につかないからね」

「聞き取れないとどうしても、調べるのが億劫になってしまって」

「それなら設定から英語の自動字幕をつけて見ると良いよ。You Tubeの自動字幕の精度がかなり上がってるから、参考になると思う」

「なるほど、ガジェット的なやつですね」

「好きなことに絡めて学ぶのは良い事だよ。でも、肩肘張りすぎて楽しめなくならないようにね」

「ですね!」


 入れ込みすぎて苦痛になってしまうというのは、好きなVチューバーを応援する活動、いわゆる推し活でもある話だ。

 テーブルの上の料理が減らなくなった頃、満腹感から桐子の集中力も少し欠けてきていた。


「河本くんも、夜川さんも凄いです。Vの活動や裏方的なことをしながら、学校の勉強もちゃんとしていて」


 地頭の差はもちろんあるけれど、二人とも自分のためになる事をきちんと選んで出来る人間だ。


「どうしたの、香辻さん?」


 桐子の声のトーンが少し落ちていたのに気づいたのか、河本くんは気遣うように言った。


「実は、先日の配信でリスナーさんに今後の目標を聞かれたんです。私、それに答えられなくて……」


 あの時は別の話題に逃げてしまったけれど、魚の骨が喉に刺さったままみたいに今日まで気になっていた。


「目標かー、あたしはそういうの決めるの苦手だな」


 そう言って、夜川さんはチョコレートケーキを食べるのに使っていたプラスチックフォークを噛んでいた。


「意外です。夜川さんは勉強も頑張ってテストの点数もいいですし、目標の大学とかあるのかと思ってました」

「んー、勉強はするよ。でもさ、具体的な何かのためってわけじゃないかな」

「それって、逆に凄くないですか?!」


 目標も無しに勉強と向き合い続けるモチベーションが桐子には想像がつかなかった。


「凄くはないってー。せっかく高校入ったのに、テストで悪い点とったら家族に心配かけちゃうじゃん。それが嫌なんだよね」

「そこまで考えてるなんて、大人です」


 家族に迷惑をかけてばかりの自分とは大違いだ。心の底から尊敬できる心構えに、桐子は小さくため息をついてしまう。


「あたしはさ、あんまし未来の事って考えたくないんだよね」


 夜川さんは手にしていたフォークを指先で回し、その先端を見つめていた。


「未来の可能性って、良いことも悪いこともある。あたしは結構、悪い事が起きる想像をしちゃうんだよね」


 桐子だけでなく河本くんも意外そうな表情をしていた。


「もしもの時の事を考えてさ、ずっと不安な気持ちを抱えてると、健康に悪いじゃん。だから、あたしは『今』ばっかり見てる」


 弄んでいたプラスチックフォークでチョコレートケーキを刺すと、最後の一欠片を頬張った。

 学校でも、桐子たちといるときも、そしてナイトテールとして配信に出ている時も、夜川さんはいつも楽しそうにしている。美人で、誰にでも分け隔てのない陽キャで、勉強も出来て、桐子には完璧としか思えなかった。そんな彼女でも、不安を覚えることがあるなんて想像すらしていなかった。


「も、もしっ!」


 気づいたときには桐子は夜川さんの手を握っていた。


「不安で眠れない時とかあったら、いつでも話してください! おすすめの睡眠導入ASMRとか教えます!」

「香辻さん?!」


 勢いに夜川さんは困惑しているようだけれど、桐子は止まれない。


「わ、私は元ひきこもりなので、不安のプロです! なので、力になれるかもしれませんから!」

「……ありがとね」


 夜川さんは何か思いついたようで、ふふっと小さく笑う。


「でもさ、香辻さんとお話してたら、楽しくて朝まで眠れなそー」

「大丈夫です! つまらない話は大得意なんです!」

「あははっ、それじゃー、期待しよっかな」


 しょうもないことに胸を張る桐子だが実績があった。

 あまりアーカイブの再生数が伸びることのない灰姫レラだが、過去にやった深夜のリスナー安眠配信だけは少しずつだが確実に増えている。コメント欄によると、話がつまらなすぎてすぐに寝落ちできると一部の人たちに好評だった。


「あたしは香辻さんの参考にはならなそうだけど、河本くんはどう? パソコンに強いし、そういう理系な夢とか目標があったり?」

「目標……とは、少し違うけど」


 前置きした河本くんは、スタジオの配信スペースの方を見る。


「僕が始めたことは、僕で終わらせたい」


 ここに居ない誰かに向けての言葉に、桐子には思えた。


(やっぱり河本くんは、アオハルココロちゃんのことをまだ……)


 アオハルココロちゃんとの戦いに赴く前日、河本くんは桐子に『アオハルココロを殺したい』と語った。アオハルココロを生み出したプロデューサーとして、けじめをつけたいという彼の心の中は変わっていないのだろうか。

 その時に河本くんが言ったように、少し前まではアオハルココロちゃんもチャンネル登録者数の増加に陰りがあったり(それでも1日千人単位の話だ)、配信の企画がマンネリじゃないかと言われることもあった。でも、最近はまた海外のアーティストとコラボしたり、ARを使っての街中ライブを開催したりと話題も勢いも取り戻している。

 それなのに、なぜ河本くんはアオハルココロの終わりに固執するのか。二人の間に何があったのか。それに河本くんの想いは……。

 本当は気になって仕方がないのだけれど、桐子は聞けないでいた。

 その一歩を踏み出して、今の関係性が壊れてしまうのが怖くて――。


「香辻さんはさ、いつも一生懸命だよねー。目標とか決めてなくても、それで良いと思うけど」


 夜川さんはそう言ってくれるけど、桐子は頷けない。


「一生懸命というか、皆さんにおいていかれないように必死なだけで。なにをするにも効率が悪いんです」


 子供の頃から、靴を履くにも、髪の毛を洗うにも、九九を覚えるのにも、何をするにも人一倍の時間がかかっていた。


「別に効率は悪くないと思うよ」


 コーラのコップを置いた河本くんが言う。


「僕はボイトレも勉強も見てきたけど、香辻さんは何をするにもまず基礎を確かめてから行動に移すよね。だから、時間がかかってしまう。でも、それって悪いことじゃないと思うよ」

「物覚えが悪いので、確認しないと不安になっちゃうんです。河本くんは、そんなことしないと思いますけど」

「するって」


 心外だなと河本くんは笑う。


「例えば、3Dを作るときもいつも基礎から見直すよ。数式、ベクトル、幾何学、人の形をしているなら解剖学的な人体構造。土台はいつも再確認しないと、良いものは作れないからね」


 魔法のように3Dモデルを作り出したり、VRのステージ演出を組み上げる河本くんが言うと、言葉の重みが違う。


「あたしもそれは分かるなー」


 夜川さんがうんうんと頷く。


「料理も一緒だよね。ネットのレシピサイトだと、調味料とか味付けばっかりクローズアップされてるけどさ、美味しいもの作ろうと思ったら『切る』とか『混ぜる』とか、調理の基本を押さえた方が良いもん。野菜炒め作るにしても、素材ごとに大きさを揃えて切れるって基本が出来てると仕上がりがぜんぜん違うよ」


 あの美味しい唐揚げとだし巻き卵を食べた後では、説得力がありすぎる。


「……でも、いつかは先に踏み出さなくちゃいけないですよね」


 基礎の重要さは分かるけれど、いつかはその上に自分だけの建物を立てなければいけない。


「そだねー、チャレンジも大事。どんなに美味しい卵焼きでも、毎日同じじゃ飽きちゃうもんね」


 毎日が同じ食事で気にしなそうな河本くんが神妙に頷いていた。


「私、アオハルココロちゃんに言われたんです。『待ってる』って」


 ハイプロライブのあの日、倒れた桐子を心配してアオハルココロちゃんがバックヤードまで来てくれた。直接会ってはいないけれど、扉一枚を隔てた向こう側からアオハルココロちゃんが声を掛けてくれた。


「嬉しかったんです。おこがましいって言われても、頑張りたいって思ったんです」


 ただ憧れるだけの神様みたいな存在だったアオハルココロちゃんが、1人の人間として示してくれた。あの時、自分の中で何かが変わったような気がした。


「でも、ライブが終わって、日常が戻ってきて。『次』は何をしたらいいのか分からなくて」


 今までと同じ事を続けるだけでは、「待っている」という言葉に応えられないことぐらいしか分からない。


「灰姫レラちゃんとして大きなことを一つやり遂げちゃったからね。その気持ち、ちょっと分かるかも」


 そう言った夜川さんは、腰だめに手を構えると、ビュッと振ってみせる。


「あたしさ、中学の時にテニス部だったんだ。最後のおっきな大会で全力を尽くしたけど負けちゃって、しばらく燃え尽きたみたいになっちゃった。受験勉強とかやらなくちゃいけないんだけど、いまいち集中できないみたいな」


 背が高くて運動神経も良い夜川さんのことだから、きっと強い選手だったのだろう。


「私も焦燥感はあるんです。でも、具体的に何をしたらいいのかなって……」


 言いながら桐子は、つい河本くんの方を見てしまう。きっと正解を示してくれるはずだと期待があった。


「そうだね、僕がこれにチャレンジしてみたらって紹介することは出来る。Vチューバーとして灰姫レラの弱い部分や伸ばした方が良いと思う部分はあるからね」


 流石の河本くんだ。桐子が求めているモノを教えて――。


「でも、それって『目標』じゃなくて『課題』になってしまう気がするんだ」


 言葉を選ぶ河本くんに、夜川さんが口を尖らせる。


「えー、アイドル企画とかだとさ、課題をクリアしてデビュー!みたいのよくあるじゃん」


 頑張れ夜川さんと、桐子も力強く首を縦に振る。


「与えられた課題をこなす力も必要だとは思う。でも、本当に重要なのはその先じゃないかな」


 一度言葉を止めた河本くんは、答えるように桐子の目を見る。


「自分がどうなりたいのか、どんな道を進みたいのか。そういう目標は、自分で考えて、自分で決めたほうがいい」


 突き放すのではなく信じていると言うように、河本くんの黒い瞳は優しさを湛えていた。


「そーいえば、先生センセも言ってたねー。受験勉強も大学へ入るのがゴールじゃなくて、何のために大学で学ぶのかって」


 手を打つように夜川さんも頷いていた。


「香辻さんが決めた目標なら、もちろん僕は全力でサポートするよ。その目標のために必要な課題も考えられるからね」

「あははっ、河本くんはそういうの考えるの得意そー」


 河本くんと夜川さんが「どうしたい?」と桐子に視線で問いかける。


「私の、灰姫レラのスタートはアオハルココロちゃんへの憧れで、アオハルココロちゃんみたいになりたいって想いでした」

「うん。その想いをもっと具体的にしていく段階じゃないかな」

「具体的に………………」


 目を瞑った桐子は自分に問いかける。

 何者になりたいのか、何を為したいの、何が欲しいのか――。

 そこにあるのは。


「あーーーー! いくら考えてもアオハルココロちゃんの顔しか浮かびません!」


 残念な自分の頭の上で、桐子は両手をバタバタと振り回す。そう簡単に具体的な目標なんて浮かぶはずもなかった。


「憧れてるままじゃダメですか?」

「灰姫レラはアオハルココロそのものにはなれない。香辻さん自身が一番良く分かってるよね?」

「……はい」


 河本くんが何を言いたいのか分かって桐子は頷く。


「以前アオハルココロちゃんに、二人でアオハルココロにならないかと誘われた時、私は断りました」


 からかわれただけなのかもしれない。

 けれど、あの時の桐子は答えに迷わなかった。


「だから私は灰姫レラとして、もう一度アオハルココロちゃんに会いに行かないと、ですね」


 ぐっと握りこぶしを作る桐子。


「粋だよねー。灰姫レラちゃんはそうでなくっちゃ!」


 夜川さんもパチパチと手を叩いて応援してくれた。


「でもでも、目標とか全然わかりません~」


 意気込んだのも束の間、すぐに萎れてしまう桐子だった。


「なら、当面の目標は『目標』を探すこと、それから『目標』を決めることだね」


 河本くんはホワイトボードの三角関数を消して、『目標A』や『目標B』を書いていく。


「うっ、優柔不断なので、探すのも決めるのも苦手です」


 良いものがあるとすぐに目移りしてしまう。高校受験やVチューバーを始めた時のように、「これだ!」と決めてしまえば頑張る自信はあるけれど、そこまで時間がかかってしまう。


「あの……その……せめて何かヒントがあれば……ダメ、ですか?」


 自分一人では手に負えないと、桐子は二人に縋るような視線を送る。


「ヒントかー。あたしも自分で何かを探すってタイプじゃないから難しいかも。面白いもの見つけたら、とりあえず自分でもやってみるみたいな? Vチューバー始めたのも、まさにそれだからねー」


 心から『今』を楽しんでいる夜川さんの姿は、いつでも輝いて見える。目標を決めなくても進んでいけるのは、桐子が持っていない強さだ。


「河本くんはさ、どうやって目標とか探してるの?」


 夜川さんの質問に、河本くんは黒のマーカーを握り直す。


「うーん……、目標って『過去』から続いている先にあるものだと思うんだ」

「過去ですか?」


 少し意外な気がして桐子は聞き返した。


「好きだったもの、強烈な記憶、あるいは後悔だったり清算だったり。良いものも悪いものも含めて、自分の過去が目標を決める……それでもいいんじゃないかな」


 河本くんはホワイトボードの下の方に『過去』と書いて、目標への矢印を引いた。


「ねぇ、前から疑問だったんだけどさ、河本くんはどうしてVチューバーをプロデュースしようと思ったの?」


 夜川さんが、桐子が聞きたくても聞けなかったことを言葉にしてくれた。


「もしかしてアイドルが好きだったとか? あっ! Vチューバーに好きな人がいたとか?」

「そうかもね」


 目を輝かせる夜川さんに、河本くんは曖昧に答える。そこには言葉にしない壁があった。


「なるほど、河本くんも色々あるんだねー」


 謝るように言って、夜川さんはそれ以上は踏み込まなかった。


「自分の過去を探ってみるのも一つの方法だよ」

「どうでしょうか……。私はほとんど中学校に行ってなかったですから。過去を掘り返しても、家に引きこもって見ていたアオハルココロちゃんとかVチューバーばっかりになっちゃいますね」


 その過去があるからこそ、今こうして灰姫レラとして活動できているけれど。


「もっと色々と経験しておけば良かったです」


 自分が薄っぺらな人間なのはしかたない。河本くんや夜川さんはもちろん、同年代の人たちに比べて人生経験が少ない。引きこもって沢山の時間を無為にしたのだから、自業自得だと言われればそれまでだ。


「もぉー、香辻さんは真面目すぎ!」


 弱気になってしまった桐子の脇を夜川さんがこしょこしょとくすぐってくる。


「ひぁあっ! ちょ、ふひゃ! くすぐったっ、あふぁっ! なにを、ひぃぁあ! あ、あ、ちょっ、ひあぁああん!」


 ひとしきり桐子が悶え終わったところで、夜川さんの手が止まる。


「いっぱい空気吸えた?」

「は、はい?」

「過去を振り返るのもいいけどさ、今も大事にしいないと! 息苦しくて身動きが取れなくなっちゃうよ」

「はい」


 息を整えながら桐子は答える。


「香辻さんは、『今』楽しい?」

「はい! 夜川さんや河本くんとゲームをしたり、ご飯を食べたり、話したり、すっごく楽しいです!」


 これだけは自信をもって答えられた。


「過去も今も未来もさ、ぜーーんぶ香辻さんのものなんだから! それを忘れちゃダメだよ」


 夜川さんは続きを促すように、河本くんの方を見る。


「誰も預言者じゃないから、最初から正解なんて分からない。結果は未来にしかないんだから、これから色々と試してみればいいよ」


 失敗しても構わないと河本くんが背中を押してくれる。


「お二人の話を聞けてよかったです」


 桐子はそっと頭を下げる。


「過去から今を見つめて、未来につなぐ……。それが目標ですね」

「いい締めじゃん!」

「とはいえ、何も思いつかないことには変わりないんですけど」


 そう言って笑う桐子の肩は軽かった。目標を探すことを楽しめそうな気さえしていた。


「ヒントじゃないけど。香辻さんは過去と比べて、今の自分は何が良くなったと思う?」

「えっと……と、友達ができました」


 桐子は勇気を出して言った。恥ずかしいけれど、言葉にして伝えなくちゃいけないと思った。


「うんうん♪」


 軽快な頷きが夜川さんに褒められているようで嬉しかった。


「これから、どうしていきたい?」

「もっと仲良くなれたら……ご迷惑でなければ」


 怖さもあったけれど、桐子は河本くんと夜川さんを見る。


「迷惑なんてわけない!」

「僕も香辻さんといるの楽しいよ。想像もしてなかった事が起こるからね」


 二人の笑顔に、報われたような気がした。

 『自分なんか』と否定していた部分を受け入れてくれる人たちがいる。こんなに優しい人たちが一緒なら、暗闇の中でも勇気を出して進んでいけるはずだ。


「あっ、そーだ! もっと仲良くなれること思いついちゃったー」


 夜川さんが悪戯を思いついた猫みたいな笑みを浮かべて言った。


「なんでしょうか? 河本くんも一緒に3人で金太郎電鉄とか」

「ちっちっちっ」


 もったいぶった様子で夜川さんは人差し指を口の前で振る。


「仲良くなると言ったら一つ! 裸のお付き合いでしょ!」

「は、裸? えええええええっ?!?!?!?!」


 そんな踏み越えた勇気は、桐子にはまだ無かった。

打ち上げで親睦を深めた3人。

『裸のお付き合い』でさらに大変なことに?!


次回を待つ間にこちらも!

第一部をまとめた


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