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教皇暗殺計画  作者: 上総海椰
19/24

6-1 その日の終わりに

あの戦いの後、地下には衛兵たちが集まってきていた。

目的はフィアたちが捕まえた男たちを地上に運ぶためだ。

ただし地下は迷宮のような構造になっており、ココルの案内が必要ではあったが。

彼らにはいろいろと聞きださなくちゃならないことがある。

もっとも首謀者のホエラニードは自害してしまったために有力な情報を聞き出すことは困難だろうが。

それでもカランティにつながる何らかの情報を持っている可能性がある。

地下で捕らえた者たちの中には魔族も中には含まれている。

魔力を使われては面倒なためにフィアが何らかの封印を施している様子だった。

クーナは不機嫌そうな顔でそれを見ている。

彼女の使役しているのはゴーレム三体。魔族たちが何かしないように目を光らせている。


「フィアさん。後は任せてもいいですか?」

地下からほとんど人がいなくなったのを見計らって、ココルは思い切ったように声を上げる。

「ココル?」

フィアは何が何だかわから無いと言った様子だ。

「ちょっと」

クーナは抜け出そうとするココルに対し声を上げる。まだ仕事は終わっていない。

ヴァロは何となく察する。

「行ってこい」

「ちょっと、ヴァロ」

クーナは不満そうに声を上げる。

「師匠、ありがとうございます」

ココルはヴァロに一礼すると歩き出す。

始めは歩いていたつもりだった。自身でも気づかぬうちにココルは走り出していた。


ココルが地下を抜け空を見上げると空は橙色になっていた。

もうあの戦いから半日以上の時間が経過している。

あの宿に残っているとは考えにくい。

あの男ならば事前に何らかの手を講じているはずである。

それでもココルは行かなきゃいけないと思った。

ココルは走る。あの少女の元へ。どうしたいのかわからない。

ただ会わなくちゃいけない、会いたいと思った。

もうここで会わなければ二度と会うことはない気がした。

自分にその資格はない。どんな顔で向き合えばいいというのかわからない。

けどそれでもあの声をもう一度聞きたかった。

ココルは宿に飛び込む。息を切らしながら台帳をもつ男に声を上げる。

いきなりの出来事に目を丸くする。

「ここの宿屋に二人の親子が昨日きたでしょう。背格好は…」

ココルの必死の形相に宿の主人はたじろぐ。

「その二人なら昼ごろに出ていきましたよ」

ココルの服には地下での下水のにおいが服にこびりついている。

宿の主人はこの厄介者を早く外に出すために答える。

「ありがとうございます」

ココルはそう言い残すと全速力で通りに出る。

夕暮れ時の通りは行き交う人々であふれていた。

昼ごろに出て行ったということはもう追いかけても捕らえることはできない。

夕暮れの光が通りを照らす。

もう何度も見た光景だというのにそれはまるで違ったものに見えた。

雑踏の中ココルは宿の前で一人の少女の名をつぶやく。

「…エウリ」



「…ココル」

その少女は馬車の上から遥か彼方に見えるトラードの城壁を見つめていた。

夕陽が橙色にその色を染めていた。

自身の家に戻ろうと誰もが足を急がせる。

「エウリ様」

一人の従者がエウリに横から話しかける。

「わかってる。私はお父様の意思を継いでみせる」

エウリの目には強い意志の光があった。

少し時間があり、エウリはその状況を理解していた。

父が犯罪に手を染めているのは薄々気づいていた。

見て見ぬふりをしていたのは自身の弱さだ。

今回のことはその報いを受けたと言えるかもしれない。


人間界で他者から差別されない自分たちの国を作る。


父ホエラニードがしようとしていたことを聞かされたことは夢物語だと思った。

人間界では教会が目を光らせている。

国を作ろうとすれば真っ先に軍を差し向けて潰してくる。

それが教会だ。教会は自分たちの敵でありそれが存在意義でもある。

ただ、それを否定することは父の人生を否定することだ。

父ホエラニードの意思を彼女は否定したくなかった。

エウリはそれを受けとめ、これから自身の生きていく道だと定める。

「…少々長旅になります。西の地にある結集の地にこれから向かわなくてはなりません」

付き人の言葉にエウリは頷く。

数名の部下を連れ立ってエウリはトラードを後にした。

「西の地…」

二人の出会いはすぐにやってくる。

それは二人の予想もしなかった場所で。考えられない形で。


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