4-3 陰謀
暗闇に潜む魔族たちはゆうに二百はいよう。
要人の暗殺のために借りてきた魔族たちだけではない。人間たちも半分以上含まれている。
それぞれが人間界において現体制に反感を抱いている者たちだ。
まもなく舞台の幕が上がろうとしている。
教会側がこちらの策謀に気付いた素振りは見えない。
近隣の村々に教皇がトラードにやってくることを流布させ、このトラードに相当な人を集め、
それにまぎれてこちらの手勢をトラードに潜入させた。
数人は摘発はされたが、情報を持たないモノたちだ。
すべては怖ろしいまでに順調に物事は運んでいる。
ホエラニードはカランティから話を聞いたときは教皇の暗殺と言う言葉にさすがに衝撃を受けた。
同時に不可能だと思った。教会の力はあなどれない。
聖カルヴィナ聖装隊、教皇近衛兵は人間側の選りすぐりの魔剣使い集団。
そんなものたちを出し抜いて暗殺を決行しようという。
無茶苦茶な話だと思った。
だがその計画を聞かされていくうちにそれは絵空事だとは決して思えなくなってきた。
その計画は百年近く前からあったものだという。
カランティは自身が失脚したこの状況を見越して計画を立てていた。
聞かされたホエラニードは戦慄する。
そしてその計画を実行するために自ら進んで名乗りを上げたのだ。
今状況はこちらの思惑通りに進んでいる。
計画が始まる前に教皇を暗殺できたのなら、教会の力を大幅に削ぐことができる。
もし成功したのならばあの方もお喜びになるに違いない。
ホエラニードは時刻を確認する。
「あと半刻か」
半刻後、教会は、いや人類は未曽有の混乱にさらされるのだ。
「あと半刻」
フィアは残りの時間をつぶやく。
フィアはまだ腑に落ちない。カランティの考えが狙撃だとすればあまりに不確実。
かといって毒殺するにも標的には近づけない。
暗殺を行うとしたらどんな手段があるだろうか。
フィアは必死に頭を動かす。何かを見落としている気がするのだ。
「毒殺とか…」
「食事に含ませるものなら、事前に毒見がされている。
空気を使ったものならここの掃滅結界がすべて排除する。ここの掃滅結界はそういうつくりになってる。
何よりそれじゃ、対象にたどり着く前に対策を打たれる。確実な暗殺にはならない。
カランティならもっと確実に標的を葬るはず」
「後は任命式の舞台の教皇のいる足元に爆弾を仕掛けるとかしかないな」
「任命式を行う劇場周辺の地下の出入り口となる場所は完全に塞いでいるし、
劇場の舞台の下はあらかじめ調べてある。その心配はないよ」
イクスはそれを口にする。聖装隊の対応は徹底していた。
「一応可能性は考慮しておいた方がいいわね。ローさん、地下の地図はありますか」
「それが一つも残されていないのです」
ローは困ったように肩をすくめる。
フィアは驚いた表情でがローを見る。
「一つも?衛兵やこの地の領主は持ってないの?」
おかしな話だ。地下の水路などの管理をするためにも普通責任者は持っているはずだ。
「それがここではカランティが一括管理していた様子で」
フィアの表情ががらりと変わる。
「ヴァロ。前にユドゥンさんからもらったトラードの地下の地図は持ってる?」
「宿屋のバックの中にあるはずだが…」
ヴァロたちは以前ユドゥンから地下の地図をもらっている。
ヴァロは不要になったためにバックのポケットに入れっぱなしにして下ろすのを忘れていた。
「ヴァロ、その地図もってきて、今すぐに」
フィアは声を荒げる。
ヴァロは言われるがままに宿まで走っていく。
「師匠…俺が…」
「待って、ココル。あなたには幾つか聞きたいことがある」
ココルがヴァロの後をついていこうとするとフィアがそれを声で制止する。
「私に?」
ココルはきょとんとその場に立つ。
ここまで切羽詰ったフィアの表情をココルは知らなかったからだ。
「地下に大きな空洞みたいなものがなかった?」
ココルは以前地下で人の目につかないように訓練をしていたという。
以前フィアたちはココルの案内で地下を歩いたことがある。
「空洞…一つあります」
思い出すかのようにココルはそれを口にする。
「そこはどのぐらいの大きさ?」
「かなり大きかったと思います。城一つは入るぐらいはあったかと」
「そこは使われた形跡はあった?」
「造られた当初から使われてないみたいですね。地下水を一時的に溜める空洞のようでしたが…」
ここでフィアはやってしまったというように頭を抱える。
「…どうして今まで気づかなかったんだろう」
そう言うとフィアはトラード全体の地図を見ながら呟く。
「フィア。地図を持ってきたぞ」
しばらくすると息を切らしたヴァロが扉を開けて入ってくる。
フィアはヴァロから地図を受け取り、その地図を広げる。
地図を見比べるフィアの顔がみるみる蒼白になっていく。
「フィア?」
一同の視線がフィアに集まる。
「…漸くわかった。カランティの計画は次のトラードの聖堂回境師が誕生する今日この日まで続いていた」
フィアは真剣な眼差しをヴァロたちに向ける。
そうしてフィアはゆっくりと歩き出す。
「ココル、地下の案内を頼めるかしら?ヴァロ、クーナ、私たちはこれから地下に向かいます」
「おう」
ヴァロとクーナはフィアの後に続く。
「ローさんとイクスさんは地上に残りできるだけ式を引き延ばしてもらえますか?
それと地下に合図を送る人間が必ずいるはずだからそいつを見つけだしてもらえますか?」
「ああ、だがどうして…」
ローもイクスも何が何だかわからない。
「カランティは劇場ごと地下に沈めるつもりよ」
ギルティのストーリー楽しい。ゲームは弱いけどw
まじめにすごいっす。いろいろと濃厚すぎる。原液カルピス一気飲みした感じw
作りこまれた物語って本当に素敵だよねぇ。




