戦い-2
ガキン!!
勢いのある、重い剣の振りを受け止めた。
ビリビリと腕まで響く振りに、かなりの手練れだとわかる。
「くっ……!」
他の兵は俺の見た目に警戒してるのか、弓矢を避けながらまだ様子を見ているようだ。
「ははっ…どうにか…なるかな……っと!!!」
相手の振りが重いということは、力がこもっているということ。
ならそれを逆手にとればいい。
俺は襲ってきた振りをかわすと、そのまま腕を掴んで後ろにまわり、
ゴキッ
腕を力一杯逆に折り曲げた。
「ぐあぁぁぁ!!!!」
剣が持てなければ襲えないだろう。
殺すことができないのは…甘いと言われるかも知れないけど。
しょうがないよな、だって俺、こんな見た目だけど狩人だし。
人殺しには抵抗がある。
まぁ、でき損ないの盗賊でもあるんだけどな。
「おおおっ!!!!」
一人倒れたことで、多勢に無勢と思ったのか、何人かがまとめて俺に向かってくる。
うーん、この人数はキッツイな~
まぁ、やるしか道はないんだけど!
剣を構えて歯をくいしばる。
俺めがけて剣を振りかぶった、その時。
俺の後ろから何十本もの矢が乱れ飛ぶ。
「油断大敵~!」
後ろをみるとフェイがニヤリと笑っていた。
当たった兵は、座り込んで動かない兵もいれば、ふらふらと遠くを仰ぎ見ている兵もいる。
「…何仕込んだ。」
「しびれ草の濃縮100%と、幻覚草濃縮100%かなっ♪
2、3日は廃人同然♪」
「…おまえだけは絶対敵に回したくねーな」
俺達は残りの兵と戦い始めた。
気がついたら人数は五分五分。
これならなんとかなるかもしれない。
そう思ったときだった。
バリバリバリィ!!!!
後ろから聞きなれない音と、焦げた臭いがした。
振り向くと、後ろにあった大きな木が半分に割れ、煙を出して焦げ尽きている。
「なっ……!」
「ザイラス、これ、雷の魔法だ! 魔法師がいる!!!」
「…悪いけどぉ、そこまでね。魔族クンたち。」
ゾワリ とした声の方向に振り向く。
兵士の間から、紫の長衣の男がこちらを見ていた。
髪は薄い金の髪を前側に重めに垂らし、毛先は長衣と同じくらいの紫色のメッシュが入っている。
俺と目が合うと、明るい黄緑色の目が、これでもかというほど大きくなった。
「あらぁ、魔族なのが惜しいくらいのイケメンじゃないの!!
アタシ個人的に仲良くしちゃダメかしらっ?!
ねぇ、ダメ?いいでしょ?!」
キョロキョロと隣の兵士たちに話しかけるその姿は、緊迫感の欠片もない。
「ネイマール様……私たちは魔族の討伐に来ているんです。
そんなことをしたら上から叱られます…。」
「あぁん、そぉなの?お堅いわねぇ~」
な…なんだこいつは…。
不思議な口調の男だが、さっきから鳥肌が止まらない。
俺達狩人は本能的に危険を察知しながら山を巡る。
だからこの手の感覚は外れたためしがない。
「ん~!まいっか!
傷つけないように殺して飾っておきましょっと!!」
そう言うなり、男の周りの気がブワリと逆立つ。
バリバリバリィ!!!
威嚇するように、俺達をわざと避けて、周囲に落雷を落とす。
草は焼け焦げ、ジリジリと燻る。
背中にヒヤリ と汗が伝う。
殺される。
そう確信した。