世界
ルシア大陸
その首都は大陸の中央にあり、ルーベンダールと呼ばれている。
その華やかな都市、中央にそびえる宮殿に訪れた客は、いるはずの場所にいない彼を探して廻っていた。
彼はとても気まぐれで我儘だ。
前にいたお付きの老騎士は眉間に深いシワを残して
「付き合いきれん」
とかなんとかいって早めに騎士を辞したのが記憶に新しい。
今のお付きはどんな騎士だったかな…?
そう思い起こしていると
「おっ…王!!!
危ないです!もう降りてきてください!!」
聞こえてきた叫び声に、そうだ、気の弱い困り顔の文官がお付きで秘書になったんだったな と思い出す。
目の前の秘書の視線の先を辿ると何かが自分に飛んできた。林檎だ。
「よお!何しにきたんだ? リード」
「…リードワースとお呼びください。」
ニヤリと笑った、王とよばれるまだ若き青年は、登っていたであろう木を降りるとリードワースのところに寄ってくる。
「お前が直接来るなんて珍しいな。神殿で何かあったか?」
そう言ってこの王は、早速肩を組んで、私の長い金の髪を弄りはじめる。
「…まぁ、何かなければあなたのところになんか来ませんよね。」
腕をよいしょと退けるが、またがっちりと組まれてしまう。だからやだったんだ、ここくるの…。
「そうか、俺はてっきりリードが王妃になる意志を固めたのかと」
「固めてないしいらんですそんなの。全力で許否します。」
「はっはっは!その歯に着せぬ感じも変わらずにいいな!」
ちょっと昔、この王は英雄だった。
そして私はお付きの聖道士。
腐った王政を倒して今の状態にしたのが5年前の話。
「で?どうした。何があった?」
「…実は…」
一息、呼吸して覚悟を決める。
「…白き華 が、神殿から消えました。」