出会い
まぁ、そんなこんなで見た目が一番魔物に近い俺が頭領のフリをして、今こーいう形になってるわけで。
…でも結局盗賊と変わらねぇんじゃねぇの。俺ら。
脅して逃げてった奴等が村を襲った奴らじゃないんなら。
「ザイラス、何考えてるかは手に取るようにわかるけどさぁ、少しぐらい頂いたってバチはあたらねぇさ。
国境越えるような商団だ。ある程度の大きな所だろ。
まぁ、この後俺らも逃げるには資金は必要だし少し位は な。」
俺の眉間のシワをぐりぐりしながら、フェイは困ったように笑う。
俺が生真面目なのか?
いや、でもやっぱり悪いもんは悪い。
あとでこっそり森の外にまとめて置いておこう。
「ザイラス!!!
…いや、お頭!」
倒れた荷馬車をごそごそ物色していた仲間が大きな声を出した。
「いや、言い直さんでいいって。
で?どうした?」
「この、荷馬車の中…捕まってた人間がいるぞ」
「は???」
倒れた荷馬車のドアはうまく開かない。
俺は思いっきりこじ開けてバキリとドアを壊した。
「ひゅー!相変わらずのバカ力だねぇ」
…うしろで何か言ってるフェイはほっといて。
中を除くと、奥に倒れた人間がいた。
ただ、その姿は茶色い麻のローブを目深に被り、黒の革の拘束具を後ろ手にされた状態でがっちりと締め付けられている。
喋れていないところを見ると、口元にも猿轡などを噛ませているんだろう。
「チッ…これは…魔術師の類いかな」
「フェイ、魔術師って何だ?」
「あー、ザイラスは会ったことねぇか。
世の中には不思議な力を使って、その指先から魔方陣を描いたり、呪文を言うことで剣も使わず不思議の力で人を倒す輩がいるんだよ。
まぁ、俺も本でしか見たことないがな。
この状態なら魔方陣も呪文も無理だろ。さっき逃げたあいつらに捕まってたんだろうな。」
「魔法…?」
全然イメージが湧かないぞ。剣もなしって、どうやって倒すんだ?
「とりあえずそんな危険な奴と接触するのは危険だ。そのまま置いといて…
って、え?!何すんだザイラス!!!」
フェイがびっくりしてる。
そんなに悪かったか?
荷馬車から抱えて出して、腕の拘束具と猿轡を外しただけなんだが。
「大丈夫か?水ならあるぞ。飲めるか?」
俺が水の入った皮袋を持っていくと、コクりと一口喉を動かしたのが分かった。
よかった。大丈夫そうだ。
「ザイラス!おっ…おまえ、何で勝手に外してんだ!やっつけられたらどうする!」
「そんなこと言ってもあんな状態で置いとく訳には…っとと!!!!」
言葉を返していると、うっかりその人間を手から滑り落としそうになってしまった。
麻のフードからずるりと手から零れ落ちたのは、
さらりとした、艶のある白銀の髪。
白磁の肌に桃色の唇。
閉じた睫毛は星に煌めく。
見たこともないような美少女がそこにいた。