盗賊団…その実状
「うっひょ~う♪お宝ザックザクぅ!」
商人が逃げ帰ると、俺達は倒れた荷馬車の中身を検分しはじめた。
「おおっ!見たことない大きさの宝石!お頭!ほらコレ!」
「……だから お頭はやめろっつーの!!」
「なぁにいってんの! めっちゃ似合ってんぜ!泣く子もビビる、盗賊団の頭 ザイラス様♪」
「お前らが勝手に決めたんだろーがっっ!!!」
フェイはいつもこうだ。
顔は狐目、狐顔で、飄々と人をからかう。
色んな作戦を思い付く頭のいいやつだ。
ただ俺へのイジリが半端ないけどな!鬼畜め!
…申し遅れた。
俺の名前はザイラス。
フェイ曰く、盗賊団のお頭…らしい。
いやお飾りだけどね!見た目でめっちゃ損な役割背負わされてるだけだけどね!!
黒髪に赤い目。
この組み合わせは、世界では魔族のそれだ。
でも一応俺は普通の人間。親だって普通だった。
それがなんでこんなことしてるのかというと…。
「うぉ~!お頭!旨そうなお菓子を発見!」
「お頭!こっちには異国の布がある!高く売れるぜ!」
「だからお頭言うなってっっ!!!
それと!!必要以上に物を奪うな! 本当の盗賊になりたいのかよ!!」
「はははっ!すまんなザイラス!フェイの作戦も随分とハマり役で面白くってな!」
こいつらは本当は盗賊団でなく、同じ村の狩猟メンバー。
小さい頃から同じ村で過ごしていたというのもあって、俺に対して偏見もしなければ、差別もしない。
皆も目こそ違う色だが、髪色は俺と同じ黒髪。
決してまわりから好まれる色じゃない。
人から疎まれることを知っているからこそ、魔族と言われるこの赤い目の俺を受け入れてくれている。
大切な仲間だ。
そんな仲間と何故盗賊なんかになってるかというと、それも理由がある。
本当なら盗賊なんてどんな相手にでもやりたくない。
だけど俺達は探さなければならないんだ。
……ヤツらの痕跡を。