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盗賊は聖女に愛される  作者: ton
1章
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プロローグ

「うぁぁぁぁぁ!!!」



国境近くの鬱蒼とした森林に悲鳴と、その声に驚いた鳥達の羽音が響き渡る。


馬車から転げ落ちた商人とおぼしき男は、腰が抜けたのか、ずりばいの状態から動けてはいないようだ。

恐怖する顔の脇すれすれに、弓矢が勢いよく飛んできて刺さる。

つい…っと、頬に落ちる血を感じた。



「荷物置いていけば命までは取らねぇさ。ほら、今逃げねぇと、殺されてぇのかと思っちまうぜぇ~?」




その声に後ろを振り返った男は。

じとり とイヤな汗をかいた。



弓矢を構えた狐目の男が、次の矢を放つ準備をしていたから というわけでもなく。

何人もの盗賊が自分を狙っていたから でもなく。




「魔…魔族…!!」




その盗賊たちが皆、濡れ羽色の 漆黒の髪色をしていたからだ。


「早く…行け!!」



その中でも中央にいたリーダーと思われる男は。

まるで血のような。

光輝く 紅色の瞳をしていた。



「ひいいいいい!!!!!」



抜けた腰はどこへやら。

商人は全速力でこの場所を抜け出していた。



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