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ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第10章 宮殿にて
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久しぶりに神祇庁に

 こういうわけで、「大盤振る舞い」の全貌は見えてきたけれど、今のわたしの立場としては、「大盤振る舞い」は関係なく、気になるのは、唯一神教の違法行為との関連。教団幹部と親しくなっているという政府高官が誰かということ。

 ところが、その点に関しては、パーシュ=カーニス評議員の反応はサッパリで、

「いやあ、分かりません。政府高官が誰と付き合おうと、興味ありませんな。伯爵も御存知かと思いますが、魔法アカデミーは、政治とは一線を画しているのです」

 なるほど…… これは、つまり、少しでも期待したわたしが愚かだった。

「ところで、パーシュ=カーニス評議員、その『大盤振る舞い』の会議、今日も開かれるのではないでしょうか。先ほど、帝国宰相やツンドラ侯の姿を見かけましたが」

「えっ!? あれっ、そうなのですか?」

 パーシュ=カーニス評議員は驚いて、「はて」と首をひねった。しかし、次の瞬間には、両手をポンと打ち鳴らし、

「ああっ、そうだ! すっかり忘れていました。今日の会議で、『大盤振る舞い』に関する諸々のことが正式決定されるのでした。いやあ、いけない、いけない……」

 評議員は面目なさそうに、ポンと頭に手を当てた。でも、それほど……、いや、まったく慌てているようなそぶりは見せず、それどころか、会議などどこ吹く風といった調子で、「ハッハッハッ」と朗らかな笑い声を上げている。

「もう会議は始まってるだろうな。でも、私がいなくても大勢に影響はないし……、そうだ、今日の会議はブッチして、図書館で時間をつぶすことにしましょう」

 パーシュ=カーニス評議員は「それでは、また、御機嫌よう」と、向きを変え、長い宮殿の廊下を、来た時とは反対の方向へ戻っていった。あの人も相変わらずのようだ。


 こうして、パーシュ=カーニス評議員の後ろ姿が見えなくなったところで、プチドラは、わたしを見上げ、ふと思い出したように、

「そうだ、マスター、神祇庁には、行かなくていいの?」

「神祇庁……、ああ、そうね。すっかり忘れてたわ」

 言われてみれば、わたしは神祇庁次官に任命されていたのだった。神祇庁に出向いたのは、確か、任命されたその日だけ。今更神祇庁に足を運ぼうというモチベーションは湧かないけど、もしかしたら有益な情報を得られるかも知れない。

 ところが…… 宮殿の長い廊下の前方から、白っぽい衣を身にまとった集団が、ガヤガヤと口々に何かを言い合いながら、こちらに向けて歩いてくるのが見えた。

 プチドラは、体をビクンと震わせ、

「マスター、あれは、もしかすると、前に神祇庁で話をした帝都の宗教界の代表では?」

 帝都の(従来型の)宗教界の代表といえば、わたしが次官として神祇庁に赴いた日に、神祇庁に押しかけてきて、早い話、とにかく面倒だった連中。前回は、適当なことを言って追い返したけど、今日も何かの陳情(又は要求あるいは強訴)だろうか。

「プチドラ、帰るわよ」

 ここは、月並みだけど「三十六計逃げるに如かず」の精神で、屋敷に戻ることにしよう。神祇庁で得られるかもしれない情報はともかく、面倒なのはイヤ、ということで……

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