毎度の宮殿へ
わたしは宮殿用のきらびやかなドレスに着替え、プチドラを抱き、馬車に乗って宮殿に向かった。アメリアは非常に残念そうな顔をして、屋敷でお留守番。アンジェラに「まあまあまあ」と、なだめられている。彼女のことは、アンジェラに任せておこう。精神年齢も近そうだし……
屋敷を出てしばらくすると、馬車は宮殿に到着した。今日は何かの行事が予定されているのか、宮殿前は少々混み合っている。十数分の順番待ちの後に馬車を乗り入れると、わたしは玄関先で馬車を降り、プチドラを抱いて宮殿の長い廊下を進んだ。
「さて……」
わたしは、ふと歩みを止めた。廊下は奥へ奥へと延々と続いている。
プチドラは不思議そうに顔を上げ、
「マスター、どうしたの? 急に立ち止まったりして……」
「なんとなく……、いえ、なんというか、こう……、ノコノコと宮殿まで来たのはいいけど、コーブ事務局次長が期待してるような情報が、都合良く集まるのかしら」
「そうだね。でも、なんとかなるんじゃない? とりあえず、ほら、あれを見て!」
プチドラが薄暗い廊下の先を指さした。そこには、肥満体の三人の人影が……
「遠くからでも分かるわ。同じような登場の仕方ね」
と、わたしは思わずため息。三人は、腹を突き出して、いかにも「私はエライ」という調子で、ふんぞり返って歩いてくる。
「マスター、どうする?」
プチドラは苦笑しながら、わたしを見上げた。
「どうするって…… 決まってるでしょ」
わたしはプチドラを抱え、すぐに、近くの柱の陰に隠れた。
そのまま、しばらく待っていると……
「いや~、今回の『大盤振る舞い』は、面白くなりそうですな」
「ちょっとした余興ですな。帝都の民衆が喜ぶなら、それもよかろうですわい」
「左様。皇帝陛下の御心を民衆に示す、良い機会となりましょうな」
歩いてきたのは、果して、アート公、ウェストゲート公、サムストック公のトリオ……、いや、三匹のブタさんたちだった。例によって、出っ張った腹をユラユラと揺らしながら歩いてくる。
「ところで、ひっひっひっ……、ウェストゲート公、例の『彼女』のことですがな……」
三匹のブタさんたちは、不意に、わたしの隠れている柱の前で立ち止まり、輪になった。その顔は、まさしくブタそのもの。このブタさんたちは……、やっぱり、ブタ。
「『彼女』とは、ひっひっひっ……、うまくいっているのですかな?」
「ほっほっほっ、おかげさまでね。先日は、特に素晴らしい一夜を楽しませてもらいましたぞ」
「なっ、なんと! 『特に素晴らしい』ですと!? それは、聞き捨てならぬですな」
ブタさんたちは、今回も猥談で盛り上がるようだ。何も、わたしのいる時に、そんな話しなくたって……




