騒動しい朝
その翌日の朝早く……
わたしは窓から差し込む日の光を受け、窓越しに小鳥のさえずりの声を耳に入れながら、ぼんやりと、あるいは、朦朧とした意識の中で……
「起きて下さい! 遅れますよ!! 早く、早く!!!」
「そうですよ、お姉様。早寝早起き。今の場合は、アメリアさんが正しいと思います」
「待って、もうちょっと…… お願いだから、本当に、最後のお願い……」
「いけません! 遅刻ですよ、チ・コ・ク!! コーブ事務局次長に怒られます!!!」
「お姉様、教団の人だけではなく、ツンドラ侯も大喜びしてやってきますよ」
「ひぃ~…… それだけは、許して……」
ドタン! バタン!! アイタ!!! そして、再び世界は闇に……
「マスター、しっかりして! 一体、どうしたの?」
「あ、あれ???」
気がつくと、わたしは、ベッドではなく床の上で仰向けに横たわっていた。プチドラが、金貨のいっぱいに詰まった袋から頭だけ出して、心配そうにわたしを見下ろしている。
「プチドラ…… あれ? そう言えば、アメリアとアンジェラは?? 二人の連係プレーでたたき起こされて、命の危険すら感じるくらいに……」
「アメリアと言えば、確か、別室を用意してあげたんじゃなかった?」
言われてみれば、確か……、昨日の晩、屋敷に帰ってきてまで教団並みに早起きさせられてはたまらないと思って、アメリアには別室をあてがっていたのだった。ということは、さっきのは、よくある夢オチ?
しばらくすると、アメリアとアンジェラが仲良く連れ立って、わたしの朝昼兼用食をもって部屋を訪れた。アメリアはどういうわけか、少々、いや、かなり興奮していて、
「おはようございます、カトリーナさん。え~っと……、今朝は、とっても、それこそ全知全能、絶対王者の唯一神の思し召しにより、とっても、素晴らしいことです!」
ちなみに、アンジェラがわたしにそっと耳打ちしたところによれば、アメリアは、今朝の朝食を見て大いに驚き、一口食べて叫び声を上げ、食べ終わると……(以下略)……、とにかく賑やか、いや、騒がしかったとのこと。
「え~っと、カトリーナさん! 朝食前です。え~っと、唯一神に祈りを捧げましょう」
アメリアは、まだ興奮冷めやらぬ様子、上ずった声で言った。
「あの~、先ほども思ったのですが、祈りには、どんな効果が? 祈って少しでもおいしくなるのなら、誰もが食事前に祈ると思うのですが……」
と、アンジェラ。言われてみれば、確かに、誰もが感じる素朴な疑問だと思う。
「そうですね。祈っておいしくなるなら…… 祈り方が間違ってたのかしら。教団本部の食事は、こういうこと言ってはいけないのですけど、とっても……」
アメリアは「う~ん」と腕を組み、考え込んでいる。アメリアとアンジェラ、会ってから時間が経っていない割には、結構、仲良くなっているようだ。




