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ティラミスに心を奪われている間に

「では、彼女が自分の世界に入っている間に、このところの情勢など……」

 と、パターソンがおもむろに口を開いた。

 ちなみに、アメリアは、おやつとして出されたティラミスに完全に心を奪われている様子。さらに、パターソンが気を利かせて、アメリアにおやつのおかわりを(アンジェラの分も一緒に)持ってきたものだから、彼女はますます興奮状態になっていた。

「じゃあ、必要な情報を手短に頼むわ」

「承知しました。では、まず唯一神教について、追加情報から……」

 と、パターソンは、わたしの耳に口を近づけ、ゴニョゴニョゴニョ。

 彼の話によれば、教団の違法行為の証拠は残念ながらつかめていないが、教団を取り巻く情勢には、少々変化があったとのこと。まずは、帝都の(従来型の)宗教界との関係では、教団の布教活動をめぐる対立が先鋭化し(いずれは表面化することも予想される)、また、武装盗賊団との関係でも、(武装盗賊団創始者の生誕地を巡る紛争を起因とする)教団の一支部と武装盗賊団との敵対関係という図式から、教団全体と武装盗賊団との全面的な抗争含みの構図へと、対立の様相が変化しつつあるとのこと。コーブ事務局次長が、既存の宗教団体や武装盗賊団のことを気にしていたのは、こういう事情があるからだろう。

「ああ、そうだ…… コーブ事務局次長といえば……」

 今度は、わたしがパターソンの耳元に口を近づけ、ゴニョゴニョゴニョ。すなわち、「教団のコーブ事務局次長が時々美しく着飾って教団本部からいなくなるが、その出かける先について、何か情報を得ているか」という質問。

「なるほど、そういうことですか。しかし、どこに出かけるのか、確たる情報は……」

 パターソンは、残念そうな顔をして言った。ただし、全く何もないわけではなく、「教団の女性幹部が政府高官とつながっている」との情報は得ていて、詳細は現在調査中とのこと。相手が政府高官ということもあって、調査は簡単には進まないらしい。

 ならば、その政府高官とやらの情報は、わたしが宮殿に出向いて集めることにしよう。もしかしたら、魔法アカデミーのパーシュ=カーニス評議員が、「ここだけの話」として、何か教えてくれるかもしれない(という、希望的観測)。


 ここで、パターソンは何やら意味ありげにニヤリとして、

「ところで、例の『大盤振る舞い』の話ですが、面白い見世物が見られるとか……」

「『例の』って? そんな話、あったかしら……」

 すっかり忘れていたけど、パターソンの説明によれば、「大盤振る舞い」とは、新皇帝の即位を帝都市民全員でお祝いするため、帝国政府が帝都市民に対し、食糧と見世物を提供するという行事(念のため、再掲)。

 今回の「大盤振る舞い」では、見世物として、ツンドラ侯とモンスターとの一騎打ちが検討されているという。発案者はツンドラ侯で、自らの強さをアピールするために、帝都の闘技場で時間無制限のデスマッチを提案し、強力に主張しているとか。「自分は帝都の警察長官だから、何も問題はない」というのがツンドラ侯の言い分らしいけど、なぜ警察長官なら問題がないのか、わたしにはサッパリ……

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