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講師はやはり

 エリート信徒たち(お世話係込み)は、コーブ事務局次長の指示に従い、ゾロゾロと幹部用食堂を出た。わたしもアメリアを伴い、その最後尾に続く。本当に、講師がマーチャント商会会長で、講演の際にわたしの正体がバレたとしたら……、マズイけど、その時はその時のことで対処しなければ。

 ただ、それにつけても……

「うっ……、おっ、おえっぷ……」

 わたしは思わず口を押さえた。先ほど無理に飲まされた黒い丸薬のせいだろうか。今度は、本当に調子がおかしくなってきた。

「カトリーナさん、ファイトですよ、え~っと、企業経営の神髄を体得するのです」

 アメリアはアメリアで、ひとりではしゃいでいるが……、とりあえず、放置しよう。


 それほど広くない会議室では、予想していたとおり、マーチャント商会会長が、演壇を前に、ぼんやりと虚空を眺めていた。顔は割と美形(耽美系)だけど、どこか無機的で、金属製のマスクのような雰囲気。

 エリート信徒たちは、順番に席についた。ちなみに、お世話係用の席はなく、自らが担当するエリート信徒の脇で立ったまま聴講するらしい(なんという身分差別)……

 幸いなことに、わたしの席は、エリート信徒として新参者だからか、一番後ろにあった。マーチャント商会会長は無表情なままで、エリート信徒の面構え等々には興味を示していない様子。うまくいけば……、言い換えれば、(おそらくは万に一つの)希望的観測としては、バレないで済むかもしれない。

 コーブ事務局次長は、エリート信徒が全員着席したのを見ると、

「用意はできたようだな。では、まずは講師を紹介しよう。マーチャント商会会長ルイス・エドモンド・スローターハウス氏だ。御本人の希望により、プロフィールは紹介しない。では、スローターハウス会長、本日は、企業経営の奥義を、よろしく伝えていただくよう、お願いしたい」

 すると、マーチャント商会会長は、形式的・儀礼的にぺこりと頭を下げ、

「ただいま、御紹介にあずかりました、マーチャント商会会長、ルイス・エドモンド・スローターハウスです。本日は、コーブ事務局次長より、ざっくばらんに企業経営の蘊奥を伝授しほしいというお話をいただいています。しかし、これは難しい注文で、企業経営とは、ざっくばらんな話としては、お金儲けそのものなのです。すなわち、お金儲けという目標は決まっている、しかし、その目標に至る道として決定版があるのかと。例えて言うと、チェスの目標はゲームに勝つことだが、効率的な勝ち方を教えてくれと……」

 会長は、よどみない口調で話を始めた。ただ、言葉に抑揚をつけることも、身振り手振りを交えることもなく、聞いた感じとしては、人が喋っているというよりも蓄音機から音声が流れてくるようなイメージ。そのうちに、だんだんと瞼が重くなって、夢の世界に誘われていきそうな感じ。ただ、コクリコクリとわたしの頭が上下するたびに、アメリアに腕を強くつねられ、現実に引き戻されてしまったが……

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