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午後は講演会

 キャンベル事務局長大激怒の翌日、「起きて下さい! 遅れますよ!! 早く、早く!!!」というアメリアの大声で起こされたわたしは、いつものように寝ぼけ眼で顔を洗い、アメリアを連れて幹部用食堂に集合した。なお、厳密に言えば、「アメリアが、寝起きでぼんやりとしてるわたしの手を引いて」が正しい描写だろう。

 昨日のことがあるので、「どこかに血の雨の痕でも残ってるのではないか」と興味津々だったけど、実際には、そのようなものは何もなかった。むしろ、昨日の修羅場が夢か幻かだったような感じ。朝食時に幹部用食堂に姿を見せたコーブ事務局次長は、いつもと変わらず端整な顔立ちにスッキリ・サッパリのショートヘアがよく似合っている。

 なお、運の悪いことに廊下ですれ違ったキャンベル事務局次長は、朝から飲んでいるのだろう、御機嫌に「うぃ~~~……、頑張ってるくわぁ~~……、若いモンはぁ~……」と、聖戦士の幹部(と思しき人)に体を支えられ、千鳥足で歩いていた。

 昨日のような痴話喧嘩はいつものことなのだろうか。昨日の話に出てきた「あのヤロウ」が何者なのか、ちょっぴり気にはなるが、詮索するだけ野暮というものだろう。


 食事終了後、コーブ事務局次長はおもむろにゴホンと咳払いをして、

「急な話だけど、午後の学習会は、予定変更……、といっても、中止じゃないよ」

 退屈な学習会がなくなるのかと期待したけれど、その期待は一瞬で打ち砕かれてしまった。ただ、なんだか、いつもとはちょっぴり違う展開の予感。

 事務局次長は、エリート信徒一同の面々を見回すと、

「これからの時代、教団の運営にも経営感覚が必要だ。そこで、午後は、企業経営の第一線で活躍する経営者を講師に招き、同志たちに経営の蘊奥を伝授してもらうことにした。つまり、講演会だな」

 わたしは思わずニヤリ。講演会なら、一方的に相手が喋りまくるだけ、ということは、すなわち、「話の間は居眠り自由」が論理の帰結となるから。

「それで、講師は……、いや、今は言うまい。では、同志たち、午後を楽しみにな」

 コーブ事務局次長はそれだけ言うと、足早に去っていった。

 アメリアは、わたしの耳元で少し興奮気味に、

「すごいです。企業経営って、え~っと……、とにかく、その、とっても難しいお話なのでしょう」

「さあ、どうだか…… 難しい話かどうかは、聞いてみないことには分からないと思うわ……と言うか、聞いて分からない話が難しい話じゃない?」

「そうですね、言われてみれば、確かに…… え~っと……、確かに、そうです」

 なんだか分からないが、ひとりで盛り上がって、ひとりで納得しているようだ。アメリアの頭の中の方が、ある意味、企業経営の話よりよほど難しそうな気がする。

 それはさておき、一体、誰を講師として招くのだろう。企業経営者といっても、大企業から中小零細企業までいろいろと、本当にピンからキリまである。「企業経営の蘊奥」と大きく出たからには、やはり、それなりに名の知れた大企業の経営者だろう。ということは……

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