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怒れるキャンベル事務局長

 わたしのエリート信徒としての生活は、その後も、以前とあまり変わりなく続いた。すなわち、決まった時間に起き、食事、学習会(座学のみならず、実習や講演会等を含む)等々の日課をこなし、決まった時間に就寝という生活。

 一方、教団の違法行為の証拠捜しは、遅々として進まないどころか、まったく進展がないと言ってもよい状況だった。経理・会計、文書管理、人事等々を扱うセクションに立ち入り、情報の収集を続けているが、このところは担当者から「また来たのですか」と、いぶかしげな目を向けられることが多くなった。いわゆるドジっ子のアメリアも、「いくら勉強のためとはいえ、え~っと、やっぱり限度というものが、あると思うんです」などと、少々不審に思っている様子。そろそろ別の方法に切り替えなければならないだろう。


 こんなことを考えながら、しかし、今日もいつもと同じように会計セクションに立入り、担当者と立ち話を交わしつつ、会計帳簿のページを横目で盗み見ていると……

「あら、これは!?」

 わたしは小さく声を上げた。会計帳簿に記載されていたのは、意味ありげな「M商会」という表記。帳簿からは、そのM商会から大量に何かを買い付けていることが読み取れるけれど、単に「聖戦士用備品」と書かれているだけで、具体的に何を買い付けたのかは分からない。

 アメリアは不思議そうに、わたしの顔をのぞきみ、

「え~っと、カトリーナさん、どうしたのですか。何かおかしな点でも?」

「ああ、ごめん、なんでもないわ。勘違いだったみたいな……、ええ、そうよ、勘違い。そうに決まっているわ」

 わたしは適当に言葉を濁した。M商会の正体や(ありがちな話としては「マーチャント商会」だろう)、買い付けたものが何かなど、気になる点はあるが、あまり根掘り葉掘り尋ねるようなことをしても、その担当者が詳細を知っているかどうか分からないし、結果的には、怪しまれるだけに終わるかもしれない。

 とりあえず、今日の証拠捜しはこれまでにしよう。わたしはアメリアの手を引き、会計セクションを出た。


 アメリアを連れて長い廊下を歩いていると、

「くそっ! あの、クソヤロウがぁ!!」

 キャンベル事務局長が、いつもの赤ら顔をさらに(まるで赤鬼のように)紅潮させ、ドスンドスンと大きな足音を立てて大股で歩いてきた(厳密に言えば、廊下の先から、事務局長の声と足音が聞こえてきた)。わたしとアメリアは何やら殺気めいたものを感じ、とっさに廊下に置きっぱなしにされていた大道具の陰に身を隠した。

 幸いなことに、事務局長は、隠れているわたしたちに気付くことなく、

「くそっ! くそぉっ!!」

 いつもの酩酊状態とは違い、怒りで頭に血が上っている様子。時折、拳でドンと廊下の壁をたたき、のみならず、壁に頭突きを食らわしている。一体、なんなんだ?

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