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ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第8章 教祖様の役割
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エリート信徒は自室で待機

 プチドラの話が終わり、程なくして、

「カトリーナさん、目が覚めましたか。え~っと、いけませんね、でも、まあ、いいでしょう。先ほど、事務局次長がお帰りになりました」

 アメリアが部屋に戻ってきて言った。突っ込みを入れるとすれば、「『いけない』のか『いい』のかハッキリして」と言ってみたいところだけど……

「コーブ事務局次長と教祖様が、ちょっと……、あっ、これは! いえ、なんでも……」

 アメリアはそう言いかけ、慌てて口を押さえた。挙動不審は明らか。元々、隠し事はできない性格なのだろう。事務局長と教祖様の間で、何かマズイあるいはヤバイことでもあったのだろうか。ならば、すべきことは一つ。

 わたしはベッドから身を起こし、

「教祖様が心配だわ。これから教祖様の部屋へ……、事務局長の部屋かしら、でも二人の部屋は隣同士だから、同じことかしら。とにかく、行きましょう」

 すると、アメリアはギョッと驚いて、

「それは、え~っと、それだけは、ちょっと……、実は、エリート信徒の皆さんには、各自の部屋で待機するようにという指示と、その監視を……、いえ、これは……」

 アメリアは、部屋の入口のドアの前に、両手を広げて立ちふさがった。


 わたしは「ふぅ」と小さく息を吐き出し、大人しく、もう一度ベッドの上で横になった。エリート信徒の自室待機とお世話係による監視がコーブ事務局次長の厳命ということだろうか。教祖様が祈祷(すなわち、治癒魔法による治療行為)から帰ってきてすぐに、事務局次長と教祖様の間で何かということは、その治療行為を巡って、両者の間で緊張や軋轢などが発止したのかもしれない。

 これまで見聞きしたことから推し測ると、コーブ事務局次長は、お金を取らないと治療行為を行わないという現実主義者のようだ。これに対し、教祖様はどうだろう。この前、教祖様の部屋から、「もっと、大人になりなさい」という(教祖様を叱りつけるような)事務局次長の声が聞こえてきたことがあった。

 ということは、合理的に考えれば、教祖様が、有料(しかも、おそらくは高額)での治療行為にこだわるコーブ事務局次長に対し、素朴に「困っている人を助けたい」という理屈でもって異議を唱え、事務局次長から「タダで治療などあり得ない」みたいな言い方でたしなめられている(あるいは言い負かされている)、という構図だろうか。


「あの~、カトリーナさん、考え事ですか? え~っと、あの~、大丈夫ですか?」

 アメリアは、わたしの顔をのぞき込んだ。のみならず、同時に、何やらハッとしたような、あるいは、ある種の驚きの表情となって、

「ああ、これはっ! よかったです、帰ってきたのですね。本当に、よかったです!」

 アメリアの視線の先をたどってみると、そこにいたのはプチドラ。アメリアは、迷子になっていたプチドラが自分で戻ってきたと、素直に信じているようだ。

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