表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第8章 教祖様の役割
62/185

とっさにでまかせ

「アイタタタ……」

 と、わたしが腰をさすりながら起き上がろうとすると、このような場合には、よくあるパターンとして、

「あなたたち、こんなところで何をしてるの?」

 コーブ事務局次長がドアを開け、祈祷を依頼した男を伴って、わたしとアメリアの前に姿を見せた。

 わたしは何食わぬ顔で、

「いえ、別に…… 実は、帰り際にお手洗いをお借りしようと思ったのですが、お手洗いを探しているうちに、道に迷ってしまいました」

「ふ~ん……」

 コーブ事務局次長は、いぶかしげにわたしとアメリアをにらんでいる。疑っているのだろうか。ちなみに、お手洗いを云々とは、当然のことながら、とっさに思いついたでまかせ。

 しかし、男はそれを真に受けたのか、人の好さそうな笑みを浮かべながら、

「お手洗いでしたら、そこの角を右に曲がって、そのまま真っ直ぐ、そして……(中略)……と、それで、角を曲がってすぐ、右手にございますよ」

「ありがとうございます。助かりました」

 わたしはアメリアの手を引き、男が示した方向に歩き出した。ところが、しばらく進んだ先で、

「カトリーナさん、違いますよ。あの人が言うには、え~っと、左じゃなくて、右です。だから、そこは右ですって」

「あら、そうだったの、あなたがいると助かるわ」

 信じがたいレベルの方向音痴のわたしだけど、ここはアメリアがいるおかげで、迷子にならずに済みそうだ。


 ともあれ、わたしとアメリアは、一応「アリバイ作り」としてお手洗いを経由し、玄関に戻った。他のエリート信徒(お世話係り込み)及び教祖様は、その時には既に馬車の中。ただひとり、コーブ事務局次長だけが外に出て、馬車を背にして腕を組み、わたしたちを待っていた。

 事務局次長は、わたしたちの姿を認めると、チッと舌打ちし、

「これで、ようやく全員揃ったのね」

 と、わたしとアメリアが馬車に乗り込んだのを見ると、自らも馬車に乗り、出発の合図を送った。

 馬車は車列を組み、ゆっくりと動き出した。車列の先頭と最後尾は、来た時と同じく聖戦士の馬車が固めている。馬車は来た道を逆に、大邸宅を出ると、きらびやかな高級住宅地を抜け、それなりに清潔な区画へと入っていった。

「教祖様の奇跡の力を間近で見られるなんて、感激です。え~っと、今日は本当に、一生忘れられない日になりそうですぅ~」

 アメリアは、馬車の中で先刻の「奇跡」を思い返しているようだ。


 その時、突然……

 ヒヒィ~~~ン!!!

 馬の高くいななく声が聞こえ、馬車は急停止した。なんだろう。何かが起こったことは間違いないが、一体、何が???

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ