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ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第8章 教祖様の役割
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価格交渉

 教祖様、エリート信徒(お世話係込み)たちは部屋を出ると、コーブ事務局次長の言いつけどおり、ゾロゾロと馬車に向かって歩き出した。でも、わたしはこっそりとその列から離れ、独自行動。といっても、大した話ではない。コーブ事務局次長がどこに行ったのか、ちょっぴり気になっただけ。

「カトリーナさん、やめましょうよ。まずいですよ。コーブ事務局次長に怒られますよ」

 アメリアは、わたしの(銀の刺繍の施された)アイボリー色の衣服の袖を引っ張って言った。でも、わたしは首を横に振り、即決かつ無言で却下。この住宅内をほっつき歩いているところを事務局次長に見つかったとしても、(見つからなくても、どのみち「政治将校」のアメリアが報告するだろうが)、すぐに「命令違背で懲罰」みたいな話にはならないと思う。うまく(現実には有り得ないくらい御都合主義的に)いけば、コーブ事務局次長が適正価格をはるかに超える治療費を吹っかけている現場に出くわすかもしれない。それが詐欺あるいは脅迫という犯罪構成要件に該当すれば、一応、刑法的には違法行為となる(帝国宰相の求める「違法行為の証拠」とは違うだろうが)。

「コーブ事務局次長はどこへ行ったのかしら。こっちだっけ?」

「違うと思いますよ。そっちへ行けば玄関で、え~っと、わたしとしては、そうしてほしいのですけど……」

 超弩級の方向音痴のわたしにとっては、アメリアは非常に頼りになる道案内だ。


 こうして、プチドラを抱いて、アメリアとともに大邸宅の中を歩き回っていると……

「非常に感謝しております。いくら感謝していると申し上げましても言い足りることはありません」

「いえ、感謝なんて…… 当然のことをしたまでです。いくら当然と強調しても、しすぎることはありません」

 ドア越しに、あまり大きくはないが、男と女の声が聞こえてきた。わたしは耳をピッタリとドアに押しつける。感じからすると、男の妻の治療費について交渉しているようだ。お互いに「感謝している」とか「当然のこと」とか抽象論ばかりで、具体的な金額は一切口に出さない。でも、コーブ事務局次長としては、できるだけ高額の費用を請求したいし、男としては、妻が治癒された今となっては、できるだけ安く値切りたいといったところ。

 やがて、話がまとまったのか、

「では、そういうことで……」

「よろしくお願いいたしますわ。オッホッホッ……」

 結局、「誠意のしるしとして教団に多額の寄付をする」ということで、金額はハッキリしないものの、とにかく合意ができたようだ。不可解極まりないが、これが大人の交渉術というものだろうか。

「ねえ、カトリーナさん、もう、行きましょうよ。いつまでも、こんなところにいると、え~っと……」

 アメリアは、(銀の刺繍の施された)アイボリー色の衣服の袖を強く引っ張った。

「そうね。話も終わったことだし、いきましょうか。あっ、あれっ、ちょっと!?」

 そして……

 バターン!!!(ちなみにこれは、アメリアに引っ張られたわたしがバランスを崩し、アメリアを巻き込んで倒れた時の音)

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