表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第7章 唯一神教本部にて
53/185

最も大切な学習

 学習会の中で、最も重視されていた(と思われる)のが、教祖様ご臨席の下での、奇跡の力を鍛える練習だった。その際には、どこで調達(微妙な表現だけど)してきたのか、怪我人や病人が学習会用の部屋に運び込まれ、エリート信徒が奇跡の力を用いて、怪我や病気の治療を行うことになる。なお、怪我や病気といっても重篤なものではなく、最も重傷あるいは重病といえるもので、骨折や肺炎といったところ。

 コーブ事務局次長によれば、「世の中には怪我や病気で困っている人がたくさんいる。その人たちに、一人でも多く、唯一神の力を注ぎ込み元気に生きてもらうことが、唯一神の御心にかなう」ということだけど、怪我や病気の治療は、早い話、新たな信徒を獲得するための手段ではないか。エリート信徒として(一般的な用語で言えば)魔法使いを集める理由も、この辺りにあるのだろう。


 コーブ事務局次長は、奇跡の力を鍛える練習には常に立会い、エリート信徒が用いる奇跡の力(一般的な用語は「治癒魔法」だけど)の程度を丹念に観察していた。

 ちなみに、わたしの場合……、プチドラを抱き、ジェスチャーだけでも精神集中しているような雰囲気を出しつつ、

「では、気合いを入れて…… えい!」

「うっ! うげっ!!」

「あら、失敗したようです。失礼いたしました」

 わたしが示す奇跡の力は、実際にはプチドラの治癒魔法だけど、プチドラも治癒魔法は専門外(というか、むしろ苦手としている)。そのため、足首の捻挫を治そうとしてアキレス腱を断裂させるような失敗は、言わば「朝飯前」。

 コーブ事務局次長は、わたしが失敗するたびに「はぁ-」と大きくため息をつき、

「あなた、真面目に力を使ってるの? まあ、得手不得手は当然あるけどさ……」

 と、半ば愛想を尽かしているような言いよう。

 アメリアは、事務局次長がため息をつくたびに「ごめんなさい、ごめんなさい」と、まるで自分のことのように謝っていた。


 ともあれ、(夕食やお風呂等を含め)一日のお務めが終わり、二人部屋のベッドで横になると、わたしは、この数日のパターンで、「さて、どうしたものか」等々、独り言。

 すなわち、教団本部に潜り込めたのはいいが、潜入の目的は、帝国宰相の求める教団の違法行為の証拠を見つけること。でも、一体、どこから手を着ければいいのだろう。倉庫に武器をかくして「反乱用」の張り紙でもしてくれていれば話は早いけれど、そう簡単にいきそうもない。

 ちなみにアメリアは、わたしがベッドに入った後も、壁際に置かれた机に向かい、紙の上にペンを走らせている。日誌をつけるのがお世話係の役割らしい。ただし、エリート信徒自身はその日誌を見てはならないという。政治将校による党本部への報告書みたいなものだろうか。とはいえ……

「え~っと、今日は、朝、定刻に起きて…… いや、そうじゃなかった。ここは……」

 日誌を仕上げるまでの間、アメリアの、ぼやきともうめきともつかぬ声が聞こえてくるので、その中身は丸分かりだったりする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ