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ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第7章 唯一神教本部にて
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いわゆる「政治将校」

 コーブ事務局次長は、わたしを他のエリート信徒に紹介すると、今度は、

「最初だから、ここにいる同志たちにも自己紹介してもらうわ」

 エリート信徒たちは、事務局次長の言葉を受けて順番に立ち上がり、簡単に挨拶した(名前は忘れたが)。エリート信徒は、ツンドラ候には及ばないが規格外の大男もいれば、どう見ても小学生くらいのお子さまや、しわくちゃの老人、さらに、混沌のモンスターとの混血みたいな名状しがたい者まで、とにかくバラバラ。年齢、性別等を問わず奇跡の力を示すことができれば万事OKということで、集められたのだろう。

 互いに紹介が終わると、(あまり期待していなかった)夕食会。屋敷で食べる朝食くらいの料理が出てくれればと思っていたけど、予想以上に粗食(粗悪!?)だった。でも、他に食事はないので、仕方なく料理に手をつけようとすると、

「カトリーナさん、ダメですよ。食前の祈りが先です」

 アメリアが背後から、わたしの耳元でささやいた。周りをチラリと見回してみると、エリート信徒たちはすごい目でわたしをにらみ、コーブ事務局次長はわたしに冷たい視線を送っている。食事前に祈りを捧げるのが教団のルールらしい。


 そして、次の日の朝、

「カトリーナさん、起きて下さい! え~っと、遅れますよ!! 早く、早く!!!」

 朝早くから、耳元でアメリアの大声が響いた。教団本部では、基本的に午前6時起床、午後10時就寝とのこと。こんなことが、これから毎日続くのかと思うと……、逃げ出したいくらいに鬱。

 起床して顔を洗うと、エリート信徒はお世話係を連れ、昨晩と同じように幹部用食堂に集合。そして、やはり祈りを捧げた後に、朝食を取る。食事は、昨日の夕食に輪をかけて質素なものだった。

 そして、朝食終了後30分程度の間を置き、途中で1時間の昼食休憩を挟んで午後3時まで、「指導者育成カリキュラム」なる学習会が(毎日)行われる。教科は、唯一神教教義のほか、読み書きや算数などの基本科目(ファンタジーの世界では識字率が低いようだ)、化学や天文学などの学術講座、経営や会計など実務技術、(少々マニアックに)戦史や戦術理論などと、幅広い。また、学習会は、座学のみならず、実習や外部講師(学者や実務家)による講演など様々な形態で行われ、結構な費用がかかっている印象。


 なお、学習会の間も、アメリア(つまり、お世話係)は、ずっとわたしの背後で影のように付き従っていた。のみならず、休憩時間に散歩する間や、トイレに行く時も(さすがにこの時は、ドアの前で出てくるのを待っているが)、わたしから離れない。なぜかと尋ねてみると、

「お世話係の仕事です。でも、気にしないで下さい。断じて、カトリーナさんを監……、え~っと、いえ、なんでもないです。本当に、なんでも……」

 分かりやすい人だ。「監」は、「監視」の「監」だろうか。アメリアが昨日言いかけてハッとして止めたのは、このことだろう。エリート信徒付きの「お世話係」とは、教団的には、共産党の軍隊における「政治将校」みたいなノリかもしれない。

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