顔合わせ
アメリアは気を取り直すように、「え~っと」と呼吸を整え、
「コーブ事務局次長がおっしゃるには、夕食時に、他のエリート信徒にカトリーナさんのことを紹介したいので、幹部用食堂まで遅れないようにと。それで、食事の場所は、え~っと、この部屋を出て、ここを右に、あそこを左、それから、ここはまっすぐで、それから……、あっ、あれ?」
アメリアは、自分で説明しながら自分で混乱している様子。でも、見ている分には面白かったりする。アメリアは、頭に両手を当てて何度か「え~っと」を繰り返した末、最後には、自分の胸を右の拳でドンとたたき、
「え~っと、とにかく、このわたしが責任を持って、食堂までご一緒いたします!」
信用してよいのだろうか。仮に時間に遅れたとしても、多少、小言を言われる程度だろうけど……
そして、夕刻、わたしは銀の刺繍の施されたアイボリー色の衣服に着替え、プチドラを抱き上げた。
アメリアは感激のあまり、少しだけど涙さえこぼし、
「素晴らしいです! エクセレントです!! エレファントです!!!」
などと、大きい声でなんだかわけの分からないことを言いながら、
「さあ、これから他のエリート信徒の方々と顔を合わせるわけですが、え~っと、こういうことは、やはり最初が肝心です。第一印象で相手を圧倒してこそ、え~っと、え~っと……、それはともかくですね……」
アメリアはふところから紙片(館内案内図だろうか)を取り出し、それを見ながらわたしを先導。クネクネと不必要に入り組んだ廊下を急ぐ。わたしならすぐに迷子になりそうなところだけど、アメリアは、道案内には不慣れでないのか、途中で何度か他の信徒を捕まえて道を尋ね、集合時間の3分前に幹部用食堂に到着した。
幹部用食堂では、コーブ事務局次長とともに、銀の刺繍の施されたアイボリー色の衣服をまとった10人のエリート信徒が既に席についていた。各エリート信徒の傍らには、無地のアイボリー色の衣服をまとった一般の信徒が立っている(それぞれのエリート信徒のお世話係だろう)。
コーブ事務局次長は、横目でわたし(プチドラ込みで)とアメリアをにらむと、チッと舌打ちして立ち上がり、
「新参者の分際で、一番最後に現れるなんて、いい度胸ね」
エリート信徒やそのお世話係たちも、一斉にわたしとアメリアをにらんだ。アメリアはビクッと身震いして、わたしの背後に身を隠す。集合時間には、一応、遅れていないはずだ。ここでは、(例えば)時間の10分前に集まるのが暗黙の了解なのだろうか。
コーブ事務局次長は、しかし、「ふぅ」と短く息をはき出し、
「まあ、いい。今日のところは大目に見るわ」
そして、エリート信徒の方に向き直り、極めて簡潔に、
「新しい同志を紹介する。ここにいるカトリーナ・ウッドだ。仲良くしてやって」




