新しいユニフォーム
わたしとアメリアはコーブ事務局次長に案内され、教団本部の長い廊下をトコトコと歩いていった。その間、何人かの(一般)信徒とすれ違ったが、すれ違う度に信徒は深々と頭を下げ、事務局次長は「ごくろうさま」と軽くうなずく。ちなみに、わたしは既に迷子、すなわち、今自分が教団本部のどこにいるのか分からないという状態。
やがて、わたしたちは、廊下の両側にドアが幾つも並んだ区画に出た。
コーブ事務局次長はふところから鍵を取り出して、そのドアのひとつを開け、
「ここがあなたたちの部屋よ」
部屋は8畳ほどのスペースで、ベッドがふたつ置かれていた。全体的に小綺麗でこざっぱりとして、なかなかよさげ。蒲団も高級品とは言えないが、フカフカとして、よく眠れそうだ。
わたしとアメリアが、とりあえずベッドに腰を下ろすと、コーブ事務局次長は、おもむろに咳払いをして、アメリアに顔を向け、
「くつろごうというところ、悪いんだけど、お世話係さん、あなた……」
すると、アメリアは緊張した面持ちながら、すっくと立ち上がり、
「はい、アメリア・ベイカーです。お世話係、誠心誠意がんばります!」
「へえ、気合いが入ってるのね、気に入ったわ。アメリア、あなただけでいいから、ちょっと来てくれる?」
アメリアは、コーブ事務局次長に連れられ、喜び勇んで部屋を出た。
わたしはベッドに横になり、いつもの調子でなんとなく、「ふぅ」とため息。
プチドラは、わたしの胸の上によじ登り、
「アメリアだけが呼ばれるなんて、一体、なんだろう?」
「さあ、わたしに言われても、分からないわ。事務手続の確認じゃない? 大した話じゃないわよ、多分……」
しばらくベッドの上で寝転がっていると、アメリアが大きな袋を抱えて戻ってきて、
「ただいま戻りました、カトリーナさん」
そして、袋の中から銀の刺繍の施されたアイボリー色の衣服を取り出し、わたしに手渡した。
「コーブ事務局次長がおっしゃいました。今日からカトリーナさんはエリート信徒。ですから、その自覚を持って、他の信徒の模範となる銀の刺繍が、え~っと、え~っと……、なんだったっけ……」
アメリアは両手を頭に当て、「え~っと」と、うなっている。事務局次長から言いつけられた「台詞」を忘れたのだろうか。どうでもいいけど……
「とにかく、今日から、今までよりも一層力を入れて、頑張りましょう」
と、結局、そういうところで落ち着いたようだ。
「え~っと、それと、もう一つ、これはとっても重要なことですが、わたしがカトリーナさんのことを……」
ここまで言うと、アメリアは、ハッとしたように口に手を当てた。そして、照れ隠しのように「アハハ」と笑い、
「え~っと、なんでもないです、本当に。失礼しました。」
なんでもないことはないと思うけど…… まあ、いいか。




