教団本部
わたし(プチドラ込みで)とアメリアは、エドウィン・キャンベル事務局長及びレベッカ・コーブ事務局次長と同じ教団の馬車に乗せられ、教団本部へと揺られていった。教祖様にお目通りして、すぐに(その足で)本部に連れていかれるとは、まったく予想外。心配はなきにしもあらずだけど、わたしがフラリと姿を消すことは今回に限った話ではない。パターソンが適当に対処すると思う。
馬車の中では、アメリアは緊張の面持ちで、かしこまって椅子に腰掛けていた。コーブ事務局次長は何も言わず、静かに目を閉じている(でも、眠っているのではなさそうだ)。教祖様は、何度もわたしやアメリアに目を遣り、何かを言いたげに口をモゴモゴと動かしては、ちらりとコーブ事務局次長に視線を送っている。どういう意味だろう。何か発言する際に事務局次長の許可が必要なのだろうか。なんだか不可解。
「うぃ~~~……」
突然、キャンベル事務局長が、(お酒でも飲んでいたみたいな)独特のくさい息をはき出した。その瞬間、コーブ事務局次長は目を開け、キャンベル事務局長をにらみつけてチッと舌打ちする。
馬車は、大通りを抜け、角を曲がり、細い道に入り、再び広い道に出て……と、軽快に帝都の街中を進んでいった。わたしには、馬車が今、帝都のどの辺りを走っているのか全然分からないし、見当もつかない。ただ、車窓に流れる風景が、それなりの市民の居住生活を思わせるものから、きらびやかなものへ、さらにそれなりのものへ移り変わっていくことから、馬車が進んでいる地域の住民のレベル(生活水準あるいは保有資産の程度)を想像することができた。
しばらくすると、馬車は通りを曲がり、大きな(しかも頑丈そうな)門をくぐって開けた場所に出た。窓越しに外の景色に目をやると、馬車はおよそ50メートル四方の(石が敷き詰められた)広場を進んでいて、その広場の周囲を4階建ての堅牢な石造りのビルディングが取り囲んでいる。
この広場は、言ってみれば、建物の中庭か運動場のような役割を果たしているらしく、アイボリー色の衣服(教団のユニフォーム)を着た筋骨隆々のマッチョマンたち(おそらくは、銅の刺繍の衣服の聖戦士と思われる)が整列し(適当な間隔を取り)、ラジオ体操だろうか、体を動かしていた。
やがて、馬車は教団本部の玄関(と思われる場所)に到着し、
「着いたわ。さあ、みんな、降りて」
コーブ事務局次長は、最初に馬車を降りた。そして、教祖様以下、ゾロゾロとコーブ事務局次長に続く。玄関先では、門番のつもりだろう、銅の刺繍が施されたアイボリー色の衣服を着た聖戦士がふたり、トゲのついたメイスを構えて目を光らせている。
わたしとアメリアは、門番の聖戦士に軽く会釈をして、駆け足で建物内に入った。
「さあ、これから頑張りましょう!」
アメリアはわたしの手を取り気合いを入れた。なんだか、わたしよりも張り切っているようだ。




