聖戦士の勇姿
突然の武装盗賊団のコーラスに、教団信徒たちは騒然となった。見た感じ、信徒たちは武装盗賊団の襲撃を恐れ、おびえているような様子。ただ、根本的な疑問として、唯一神教と武装盗賊団との接点は、どういうところにあるのだろう。「どちらもマトモでない人たちの集団だから」という説明でもいいけど、それでは御都合主義に過ぎる。アメリアにきいて分かるとは思えないが、とりあえずきいてみよう。
「あの、ひとつ質問ですが、先ほどから聞こえているコーラスの発生源と唯一神教に、一体、どういう関係があるのでしょうか」
「はい、それはですね、え~っと…… 詳しい話はよく知らないのですが、不気味な声を上げているのは武装盗賊団といって、それはそれは恐ろしい……」
アメリアは身振り手振りを交え、武装盗賊団が恐ろしい集団であり、教団の仇敵であるということを説明しようとした……が、話がバラバラで要領を得ない。
そうこうしているうちに、
……ぺ……れ……ぎ……よ…… ……ぺ……れ……ぎ……よ……
……ぺ……れ……ぺ……れ…… ……ぺ……れ……さ……ぁ……
不気味なコーラスの音量は、更に大きくなっていく。
一方、このような一般の信徒たちの動揺をよそに、教団の布教活動への妨害排除を担当する聖戦士たちは、各々の武器を持ち、(炊き出し会場であった)スラム街の広場の前面に出て、信徒を守る壁のようになって整列した。筋骨隆々とした聖戦士たちの戦闘態勢は、見た目には、なかなか壮観。
「ああっ、見てください、カトリーナさん、聖戦士の皆さんです。え~っと、安心してください。あの人たちが、きっと、わたしたちを守ってくれます!」
アメリアは感動的に言った。他の一般信徒たちも、聖戦士の勇姿に勇気づけられたのか、少々落ち着いたようだ。でも、実際のところ、果たして、どうだろうか。宗教団体の自警団的な武装集団が、喧嘩のプロのエリート集団にかなうとは思えないが……
「マスター、何が起こるか分からないけど、いざとなったら……」
プチドラは、わたしの耳元でささやいた。もちろん、わたしもそのつもり。聖戦士が武装盗賊団を撃退できるなら問題ないが、反対に撃滅されてしまうようなら、プチドラの魔法でなんとか(魔法で反撃するにせよ、隻眼の黒龍モードで脱出するにせよ)この場を切り抜けよう。
チャック支部長は、武器を手に身構える聖戦士の後方から、
「皆さん、何も恐れることはありません。なぜなら、我々には、唯一神の御加護があるからです。異教の徒に、唯一神の鉄槌を下してやるのです!」
少々声が上ずっているようだが、勇ましく声援を送っている。ただ、この人に限っては、実際の戦闘では戦力なりそうにない。




