教えの実践を終えて
「あの、ちょっと…… 申し訳ありませんが」
と、わたしはアメリアを呼び止め、ふと気がついた疑問(信徒の中に、作業に加わらず、武器を構えて突っ立っている者が相当数いること)について、きいてみた。
すると、アメリアは、なぜだか急にあたふたとして、
「はい、あの人たちは『聖戦士』の方々ですが……、え~っと、疑問を持つのはとても良いことと思いますが、今は……、そうですね、今日の炊き出しが終わったところで説明しますので、しばらく、お待ちを……」
と、駆け足で、どこかへ走り去っていった。一体、なんなんだか。忙しいのだろうか。あるいは、アメリアも詳細はよく分かってなくて、これから調べに行くのだったりして……
その後、程なくして、炊き出しは終了。その日用意したお粥はなくなり、スラム街の住民は「ありがとう」と礼を言いながら、住処に戻っていった。
わたしは「ふう」と息を吐き出し、「疲れた」と、その辺りに転がっていた石に腰掛けた。ちなみに石は直方体で、最長の辺の長さは50センチメートル程度と結構大きく、石の数は全部で10個程度。
プチドラは、石の上を飛び跳ねたり、石から石に飛び移ったりしながら、
「マスター、お疲れ様」
「何はともあれ、近くに腰を下ろせるところがあって、よかったわ」
石の上に腰掛けてひと息ついていると、アメリアが分厚い冊子を持って駆けてきて、
「カトリーナさん、お待たせしました。え~っと、分かりました…… あっ、いえ、分かったというのは言葉のあやで、え~っと……」
先刻のわたしの質問に関してだろうが、「分かりました」ということは、やはり、即答できず調べていたのではないか。でも、それはさておき……
「え~っと、先ほど申しましたように、あの方々は『聖戦士』ですが、聖戦士とは、つまり……」
アメリアの(分厚い冊子を参照しながらの)説明によれば、教団には武装集団として「聖戦士」という集団が設けられており、教団幹部の護衛、布教活動への妨害の排除、その他の力仕事(露骨に言い換えれば「暴力」)を担当しているという。聖戦士の最高司令官はエドウィン・キャンベル事務局長であり、聖戦士のユニフォーム(アイボリー色の衣服)には、それと分かるように銅の刺繍が施されているとのこと。
「へえ、そうなの…… 宗教団体なのに、武装組織とは物騒ね」
と、わたしは、ふと独り言。ただ、教団は、帝都の(従来型の)宗教界と潜在的に対立・緊張関係にあるようだから、今後予想される紛争等に備え、独自の戦闘力を保持しておきたいということであれば、一応、話は分かる。
「見てください、聖戦士の人たちを。とっても強そうでしょう」
アメリアは、遠くで武器を持って立っている聖戦士の一人を指して言った。確かに、筋肉向き向きのマッチョマンで、強そうには違いない。本当に強いのかどうかは分からないが……




