表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第4章 潜入捜査
27/185

いかに困っているかを

 わたしは、内心の「ニヤリ」をおくびにも出さず、

「あの……、実は……」

 と、言いかけたところで、少し間をおいて、考えるようなそぶりを見せ、

「いえ、なんでもないんです。やっぱり、急にこんなこと……、ぶしつけだわ」

 そして、恥じ入ったように、教団の信徒にクルリと背を向けた。これも心理作戦のひとつ。言われなければ反対に聞きたくなるのが、人情というものだろう。

 思ったとおり、その信徒は、わたしの前に回り、

「そんなこと言わずに、話していただけませんか。わたしたちにできることなら、相談に乗りますから」

「でも……」

 わたしがなおも躊躇するフリをすると、その信徒は、「どうしたものか」と、少々困っている様子。


 そうこうしているうちに、他の信徒たちも「一体、何事だろう」と、わたしとその信徒の周囲に集まってきた。そろそろ頃合いだろう。あまり引き延ばし過ぎると、かえって効果が削がれかねない。

 わたしは、恥ずかしそうに目を伏せながら、

「実は、あの、とっても困ったことになってしまって……、金銭問題なのですが……」

 と、涙ながらに、自分がいかに困っているかを訴えた。

 もちろん、これは大ウソ。ちなみに、わたしの話の内容は次のとおり。

 自分は、この近くの裕福な商人に仕えるメイドだが、止むに止まれぬ事情により、悪いこととは思いながら、主人の「貯金箱」から金貨3枚を内緒でこっそり拝借してしまった。というのは、自分の母親が病気になり、その病気の薬を買うために、どうしても緊急にお金が必要になったから。

 主人は妙にキッチリとしていて、7日に1回、自分の貯金箱に入っている金貨の数を数える週間がある。前回数えたのが6日前だから、次に数えるのは明日。それまでにどうしても金貨3枚を工面しなければならない。

 なお、主人は、お金にキッチリとしているが変態でもあり、もし、貯金箱からお金がなくなっていることが知れれば、逆上し、メイド全員を裸にして笞で打つだろう。わたしのせいでメイドみんなに迷惑をかけたくないが、お金がないのでどうにもならないし、すぐにお金を得る方法もない。だから困っていた(以上)。


 わたしの話を聞くと、信徒たちは輪になって、何やらヒソヒソと話を始めた。わたしが今着ているのは、だいぶ前に使っていた質素なメイド服だから、身なりでウソがバレることはないはず。話の内容も、冷静に考えれば突っ込みどころがありそうだけど、人が好さそうで善良そうな信者のことだから……

 しばらくすると、信徒たちの輪が解け、最初にわたしに話しかけた女性信徒が、

「あの~、お話は分かりました。でも、金貨3枚となると、大金なので、上の指示を仰がなければなりません。その間、外でお待ちいただくのも悪いですから、どうぞ、中へお入り下さい」

 と、唯一神教支部の入り口のドアを開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ