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いつもの公園に

 わたしはプチドラを抱いて、帝国宰相の後ろ姿を見送りながら、

「なんなのかしら、あの態度は……」

 と、(腹を立てる以前に)呆気に取られ、口をポカンと開けた。

 プチドラも、「はて」と首をかしげつつ、

「なんだか分からないけど……、本当に、なんなんだろう」

 ちなみに、後に様々なルートから得た情報を総合すると、帝国宰相としては、ウェストゲート公が唯一神教のコーブ事務局次長と懇ろな間柄にありそうなことは当初から感づいていたので、ウェストゲート公(あるいは三匹のブタさん全員)が唯一神教に対して機密情報の漏洩や違法な便宜供与等を行っている動かぬ証拠を手に入れることができれば、それで十分だったようだ。その「動かぬ証拠」こそ帝国宰相のイメージする「違法行為の証拠」であり、そもそも、わたしと帝国宰相の間には最初から、「違法行為の証拠」の意味の解釈について齟齬があったらしい。宰相が具体的に説明をしてくれればよかったのだが(多分、わたしにはあまり詳細な情報を与えたくなかったのだろう)、今更そんなことを言っても仕方がない。

 なお、帝国宰相が不機嫌だったのは、「大盤振る舞い」のため帝都に来訪していたサイクロプスが、大暴れの後に最終的に魔法アカデミーの魔法使いに殺害されてしまったため、「大盤振る舞い」の催しの実行が不可能になり、結論的に言えば、事業の施行請負業者のマーチャント商会との間で、請負代金を「払え、いや、払わない」という紛争が持ち上がってしまったかららしい。


「まあ、いいか」

 宮殿からの帰り道、わたしは馬車の中で、ふと独り言。今回は儲け損なってしまったけれど、反対に損もしていないのだから、これはこれでよしとしよう(プチドラは、今なお教団の財宝を諦めきれないようだけど)。

「こんな時は、やっぱり、アレね」

 ちなみに、「アレ」とは、公園で基地外じみた演説をぶっている「神がかり行者」のこと。プチドラは、いつものように「なんだかなあ」という顔で、乗り気ではなさそうだけど、たまにはこういう気晴らしもいいだろう。馬車は、神がかり行者がいる公園に方向を向けた。


 やがて、馬車が公園に到着すると……

「ウソ偽りのドロ海の底深く、汚物にまみれた日々を送る一般大衆諸君! しかし、世がいかに背信と悪徳に満ちようとも、真実の光は時として無知蒙昧な大衆を滅ぼす雷光となることを忘れるな!!」

 今日はうまい具合に、神がかり行者のお出ましのようだ。でも……、何かが、いや、全てが違う。文字にした言葉を除き、全てが違う!

 プチドラも「えっ」っと驚いた声を上げて、わたしを見上げ、

「マスター、これは一体???」

「なんだか分からないけど…… 文字面を見ているだけでは絶対に分からないけど、とにかく、その声の方に行ってみましょう」

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