表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第18章 教団本部前の激闘
168/185

いずれは交通渋滞に

「ぽっぽー、へっぷー」

「ぷっぷ-、ぶっぴー……、はっはっはっ」

 意味は皆目見当もつかないが、これでも会話が成立しているようだ。先ほどから通訳を務めているダーク・エルフは、サイクロプスに向かってにこやかに笑いかけている(本当に御苦労なことではある)。一方、サイクロプスも、今のところは機嫌よく、時折大きな口を開けて笑いながら、話をするのを楽しんでいる様子。この調子なら、もうしばらくはサイクロプスを暴れさせずに済みそうだ。なので、わたしはとりあえずホッと一息。


 ここで、なんということはないが(一息のついでに)周囲をクルリと見回してみると、

「なんだか……、なんとも言いようがないけど、なんなの、あれ?」

 教団本部前を(本部側から見て右から左あるいは左から右に)走る通りでは、その通りを一方に進んだ先と、その反対方向に進んだ先に(つまり、教団本部を出て、右に行こうが、左に行こうが、その進んだ先に)、人だかりができていた。さらに、その人だかりをよく見ると、教団のユニフォーム(アイボリー色の衣服)の着用者がその半分以上を占めている。

 ということは、すなわち……

「教団の支部から急いで駆けつけてきた信徒たちだろうね」

 と、プチドラはわたしの腕の中で、「なんだかなぁ」といった表情。

 わたしも「ふぅ」と、小さく息を吐き出し、

「信徒なのは、見れば分かるわ。それに、あんな離れたところに集まってる理由も……」

 信徒たちは、キャンベル事務局長の「教団本部に全員集結せよ」という命令を受け、集まってきたに違いない。ところが、教団本部の入り口の門の前では、恐ろしい異形の怪物サイクロプスが座り込んでいる。信徒たちはおそらく、「事務局長の命令は命令だが、しかし……」と、教団本部に近づくことに逡巡しているのだろう。

 なお、人だかりのうち教団のユニフォームを着用していない者は、(教団支部での住み込みではない)いわゆる在家信者、あるいは、教団とは無関係の一般の通行人だろう。


 その(右と左の)人だかりは、少しずつではあるが、一人、また一人とその数を増やしているように見える。このまま放置すれば、そのうち、この付近一帯でひどい交通渋滞が発生するだろう。

 プチドラは、わたしを見上げ、

「マスター、なんだか……なんとも言いようがないけど、どうするの?」

「『どうする』と言われても、どうしようもないわ。とりあえず成行に任せるしか……」

 わたしには、集まってきた教団信徒を本部内に誘導する義務はないし、無償かつ善意でそういうことをする義理もない(と、自分では思う)。ただ、余り渋滞がひどくなって、帝都の警察が交通整理など始めると、面倒なことになるかもしれない(それは困る)。そんなことを考えていると……


 ……ぺ……れ……ぎ……よ…… ……ぺ……れ……ぎ……よ……

 ……ぺ……れ……ぺ……れ…… ……ぺ……れ……さ……ぁ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ