表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第17章 サイクロプス
158/185

アリーナの一つ目巨人

 ガイウスが頑丈そうな鉄の扉を開けると、その先には、広大な円形のアリーナが広がっていた。アリーナの周囲を、階段状の観客席がぐるりと取り囲んでいる(夜なので暗くて見えにくいが、伝聞知識にしたがえば、建築物の構造上、そうなっているはず)。

 そのアリーナの中央部には、黒い山のような(あるいは壁のような)影があって、わたしたちが近寄ると、「うっほー」だか「ほっぽー」だかハッキリ聞き取れないが大きな声を上げた。

「これが……」

 わたしは巨大な影を前にして立ち止まり、思わず声を上げた。これまでの流れから考えれば、この巨大な影はサイクロプスに間違いない。

「うむ……、しかし、暗くて少し分かりづらいな。誰か……」

 ガイウスはそう言って、仲間のダーク・エルフたちに顔を向けた。すると、その一人が、口をモゴモゴと動かした。これは、例によって魔法の呪文だろう。


 程なくして、アリーナ内は昼のように明るくなった。周りを見回してみると、アリーナの上には光の球が幾つか打ち上げられ、野球場に取り付けられた照明のように闘技場を照らしている。

 すると……

「うっ、うげぇ~! こっ、これがサイクロ……!! うわぁ!!!」

 キャンベル事務局長が、驚嘆の(間の抜けたような感もあるが)声を上げた。

 わたしたちの前にいたのは、果して、身長は(北方の巨人よりひと周り大きい)4階建てのビルほどもある一つ目巨人、サイクロプス。今はアリーナの地べたに座り込んでいるが、単一の超巨大な目は、わたしたちの背丈よりはるかに高いところにあって、射すくめるように鋭い眼光を放っている。

「サイクロプス、いつ見ても強そうですねえ。知性はまったく感じられませんが」

 クラウディアは遠巻きにサイクロプスを見上げ、「ククク」と(馬鹿にするように)笑った。


 よく見ると、サイクロプスの周囲には、十数名の人影(ガイウスの仲間のダーク・エルフであろう)がたむろし、何やら身振り手振りを交えてサイクロプスに話しかけようとしている様子。その傍らには、四つ足の大きな家畜(すなわち、「牛」)の死体が山と積まれている。さらに、その牛の死体の山のすぐ隣には、甲冑を身のまとった兵士が(先刻、通路の一角に無理矢理押し込まれていた警備兵の仲間だろう)一人、無造作に縄でグルグル巻きにされ、転がされていた。

 ガイウスは、満足げに何度かうなずき、

「うん、だいたい、予定どおりだな。お土産も確保できたようだし」

「お土産って?」

 わたしはガイウスを見上げた。すると、ガイウスはニッコリとして、牛の死体の山を指さした。話によると、わたしたちとは別行動の仲間が、サイクロプスへの手土産にするため、例の「大盤振る舞い」のバーベキュー用に帝都に連れてこられた牛を、十数頭、「くすねて」きたのだとか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ