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ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第16章 帝都の闘技場
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ギュウギュウに詰め込まれた……

 キャンベル事務局長は、余程驚いたのだろう、先頭を歩くガイウスの隣で「あわわ」と青い顔をしている。さっきまでの元気はどこかに吹っ飛んでしまったようだ。「何事だろう」と事務局長の近くまで歩み寄ってみると、それもそのはず……

「なに、これ……」

 と、わたしは、瞬間、言葉を失った。というのは、通路の途中に6畳程度の広さの小部屋のようなスペースがあり、そこに、警備兵(おそらくは、その死体)がギュウギュウに押し込まれ、詰め込まれていたから。比喩的に表現すれば、均一料金で詰め込み放題の品物を少しでも多く持ち帰るため、品物が少々損壊しようが構わず、とにかく袋の中に(あるいは袋を拡張してでも)入るだけ入れ込むような状態と言えようか。


 わたしはガイウスを見上げ、

「あの~、これは一体?」

「先に闘技場に到着した仲間が気を利かせて、障害を排除してくれたのだろう」

「確かに、警備兵に騒がれたら面倒だけど、それにしても…… まあ、いいか……」

 と、わたしは独り言のように言った。

 ガイウスの解説によれば、わたしたちとは別行動のダーク・エルフたちが、わたしたちの到着に先立って、闘技場内の警備兵を一掃するとともに、死体が通行の邪魔にならないよう、このスペースに死体を詰め込んだと推察されるとのこと。一見、鬼畜の所行のようにも見えるけど、警備兵は、ガイウスたちとは同族ではなく、むしろ「すべてのエルフの母」を幽閉する仇敵の一味とも言える。ダーク・エルフにとっては、警備兵を物のように扱うことに対し、ためらいを感じることはないのだろう。

「え~、とにかく……」

 と、ガイウスはゴホンと咳払いをして、

「先を急ごう。あまりぐずぐずしていると、朝になってしまうぞ」

 わたしたちはガイウスに促され、更に先へと進んだ。


 そして、今までと同じく殺風景な通路を進んでいくと、程なくして、その通路の先に、頑丈そうな鉄の扉が見えた。

 ガイウスは「ふぅ」と小さく息を吐き出し、しかし、ニッコリとして、

「ようやくアリーナに到着のようだな」

「では、ようやくサイクロプスとご対面、その馬鹿面を拝めるというわけですね」

 クラウディアは「キャッキャッ」と、子どものように純粋は歓喜の声を上げた。そして、わたしの耳元に口を近づけ、

「サイクロプスを見るのは、本当に久しぶり。楽しみです」

「そうなの? わたしは初めてだけど……」

 ダーク・エルフにとっては、これからが「すべてのエルフの母」を救出できるかどうかの正念場のはずだが……、クラウディアのみならず、他のダーク・エルフたちも、これから目にするであろうサイクロプスに興味津々の様子。エルフとは……、本来的に、こういう種族なのだろう。

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