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ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第16章 帝都の闘技場
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幼稚園児を相手にするように

 わたしは、もう一度、キャンベル事務局長の前で、

「キャンベル事務局長、大丈夫ですか、酔いは覚めましたか」

「うぃ~、問題ないぞぉ。しかし、なんだ、なぜ、俺は縛られてるんだ?」

 事務局長は、ほんの一瞬前とは打って変わって、落ち着いた様子。ガイウスの魔法なのだろうが、いくら魔法でも、この変わり様は、一体……

 すると、クラウディアは、わたしの耳元に口を近づけ、

「驚かれたかもしれませんが、簡単に言えば、これは、ある程度理性的な会話が可能になるという……、ある意味、御都合主義かもしれませんが、そういう魔法です」

 ダーク・エルフが「そういう魔法」と言うなら、そういうものなのだろう。


 なんだか、少々拍子抜けみたいな感もあるけど、それはさておき……

「キャンベル事務局長、提案があるのです。結論から言いますと、この際、例の『ブタ野郎ども』を一網打尽にやっつけてしまってはいかがかと……」

「なにっ! ブタ野郎だと!?」

 その瞬間、キャンベル事務局長の表情がにわかに険しくなった。「ブタ野郎」という言葉には、過敏に反応するようだ。

「ブタ野郎を成敗できるのか? それは本当なのか? そういえば、お前の顔、どこかで見た……、そうだ、いつだったっけ、確か、武装盗賊団をぶちのめした女だな!」

 キャンベル事務局長は、グルグル巻きにされたまま窮屈そうに体を揺すっている。サイクロプス並みの知性の事務局長でも、自らが直接目の当たりにした出来事については、案外よく覚えているようだ。


 わたしはキャンベル事務局長の耳元で、ゴニョゴニョゴニョと(ダーク・エルフに聞かれて困る話ではないので、単なる演出あるいは気分の問題として)、今現在、この闘技場にサイクロプスが滞在していること、サイクロプスを味方につければ強大な戦力を得ることとなること、サイクロプスの力を使えば「ブタ野郎ども」をひねり潰すことなど簡単にできること等々について、幼稚園児を説得するような調子でささやいた。

「なっ、何っ!? サイクロプス? 確か、ものすごく強いやつだろう!? そのサイクロプスが仲間になるってことは、つまり、ブタ野郎どもをムチャクチャだぁ!!!」

 キャンベル事務局長は、鼻息を大いに荒くして言った。

「俺は、この時を待っていたのだ。聖戦士の力に加え、絶対的な力を手にする時を!」

 事務局長の話によれば、実は前々から教団の聖戦士を使ってブタ野郎どもを成敗しようと考えていたが、その考えを打ち明ける度にコーブ事務局次長から「聖戦士では力不足、絶対に失敗する」と反対され、今まで実行(武装蜂起)を思いとどまっていたという。先日、(プチドラの魔法で)武装盗賊団を壊滅させたわたしを聖戦士にスカウトしようとしたのは、その力の不足分を補うためらしい。ということは、力さえ手にすれば、本格的な武力闘争を起こす気は満々ということだろう。

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