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ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第16章 帝都の闘技場
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たらればの話

 わたしの額から脂汗がにじんだ。プチドラの言うように、コーブ事務局次長が教団本部を留守にした後、キャンベル事務局長を殺害又は拉致し、教団の宝物庫から金銀財宝を運び出すことにすれば、最小のリスクかつ最高の成功確率で、教団本部の金銀財宝を手にすることができただろう。

 でも……、さっき、キャンベル事務局長をグルグル巻きにした「ついで」に、宝物庫あるいは「開かずの間」から金銀財宝を運び出したとすると、その場合はダーク・エルフの力を借りたことになり、彼らに相応の分け前を支払わなければならなくなる。ただ、それは、ぶっちゃけ、困る。

 いや、しかし……、最初から考え直してみよう。コーブ事務局次長が教団本部を留守にしてキャンベル事務局長が猛り狂っている日に、(ダーク・エルフの力を当てにするのではなく)帝都の駐在武官(親衛隊)が馬車で教団本部に乗り付けることとすれば……

 仮に今日、ガイウスではなく、パターソンたち駐在武官を連れて教団本部に乗り込んでいたなら(カギのかかったドアの破壊等、必要最小限の実力行使を伴い)、今ごろは教団の金銀財宝を馬車に満載して祝杯を上げていたかもしれない。

「ああっ!」

 わたしは思わず大きな声を上げた。これには、プチドラのみならずダーク・エルフたちもビックリした様子。みんな一斉に、顔をわたしに向けた。

「あの~、マスター、急にどうしたの?」

 プチドラは、不思議そうな顔をわたしに向けた。

「なんでもないわ。なんでも…… とにかく、教団の金銀財宝は、どのみち、既にわたしの掌中にあるのよ。直接手にとって確かめるのは、今日でなくてもいい」

「ふうん……」

 プチドラは合点がいかなさそうだけど……、ここはひとまず、そういうことにしておこう。


 ここで、ガイウスは、おもむろにゴホンと咳払いをして、

「今、取り込み中かもしれないが、あまりモタモタもしていられないのでね」

 と、グルグル巻きにされ地べたに座り込んでいるキャンベル事務局長の髪を、グイと引っ張り上げた。事務局長は苦悶の表情で「オラー」とか「ゴルァ」とか、言葉の意味としては無内容の唸り声あるいは叫び声を上げている。

 わたしは事務局長の前にしゃがみ込み、

「キャンベル事務局長、わたしが分かりますか?」

 すると、キャンベル事務局長は、意味のない「オラー」とか「ゴルァ」を随所に挟みつつ、

「誰だ、お前は!? お前なんぞ、誰が、知るか! なめとんのか、許さんぞ!」

 と、おそらく動物的な衝動に突き動かされているのだろう、まったく話にならない状態。

 これを見たガイウスは、やれやれといった顔で、キャンベル事務局長の額に自らの右手人差し指の指先を当て、何やらぶつぶつとつぶやいた。すると、今回もまた、あ~ら不思議、一瞬にして、キャンベル事務局長は大人しくなり、ニコニコと笑みさえ浮かべるようになった。

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