表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
インテルメッツォ
149/185

サイクロプス来訪

 晴れ渡った空の下……

 ズシーン! ズシーン! ズシーン!

 帝都では、まるで(古典的な)巨大ロボットのような重厚な足音を伴い、一つ目巨人サイクロプスが大通りを揺るがしていた。帝都市民はこぞって沿道に集結し、この尋常ならざる巨体(しかも異形)に見入っている。ちなみに、サイクロプスの身長は、4階建てのビルくらい。手にする武器の棍棒も超巨大サイズで、小さい家なら一撃でバラバラにすることができるだろう。

 この日、サイクロプスが帝都に到着するという知らせを耳にしたわたしは、主に野次馬根性から、質素なメイド服を着てプチドラを抱き、アンジェラとアメリアとともに、帝都の一般市民に交じってサイクロプスの見物に出かけていた(もちろん、道案内はアンジェラとアメリアの二人にお任せ)。

 アンジェラは、サイクロプスの規格外の巨体から放たれる威圧感に圧倒されたのか、

「すごい……ですね」

 と、あんぐりと口を開け、その場に立ち尽くしている。

「え~と、え~と、え~と……」

 アメリアもまた、度肝を抜かれたのか、驚きを表現する言葉が見つからないようだ。

 サイクロプスは、やがて、集まった人々の歓声とも悲鳴ともつかない大きな声のハーモニーに包まれ、帝都の闘技場に向けて去っていった。聞くところによれば、サイクロプスには適当な宿泊先がなく、しばらくは闘技場の真ん中に巨大なテントを張り、野営のようにして過ごすらしい。体が大きすぎるのも、何かと不便なものだ。


 ちなみに、サイクロプスの頭の悪さの利用法についてガイウスやクラウディアと話し合ってから、今日で一週間。その間、何度かダーク・エルフたちと打合せやミーティング(を名目としたお茶会)を行ったけど、計画は、基本的には当初のわたしの提案のとおり実行される手筈となっている。なお、コーブ事務局次長については、ダーク・エルフたちの秘密の情報網により、今日から帝都の一等地のウェストゲート公の屋敷でお泊まり旅行という確証を得た。今のところ、事はわたしの目論見のとおりといったところ。


「さて、目当てのサイクロプスも見たことだし……」

 わたしはアンジェラとアメリアの肩をポンとたたいた。これは、すなわち、「用が済んだから帰ろう」という合図。しかし、アンジェラもアメリアも、もう少し街中の散策でも楽しみたいのか、「えっ、もう?」という表情。

 その時……

 モォー! モォ-! モォー! モォー! モォー!

 にわかに聞こえてきたのは、牛の鳴き声だった。しかも、一頭や二頭ではなく、何十頭か何百頭か……、正確な数が把握できないくらい。

 程なくして、わたしとアンジェラとアメリアの前を、二列縦隊の牛の行列が、非常にゆっくりとした速度で通り過ぎていった。おそらく、この牛は、「大盤振る舞い」でのツンドラ侯とサイクロプスとの対決(予定)の後、バーベキューにされる運命なのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ