表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第15章 常識を外れた人たち
144/185

神話の山地の珍味展

 目の前には、おどろおどろしいゲテモン屋の看板が、来る者を威圧するように掲げられている。わたしはプチドラと、もう一度、真っ青な顔を見合わせた。ここは、覚悟を決める以外ないだろう。

 ツンドラ侯は、御機嫌に「うぉー」と声を上げて、入り口のドアを開け、

「おい、オヤジ、また来てやったぞ! 今日は何を食わせてくれるんだ?」

 すると、店の中からは、「いらっしゃい」と、店のオヤジの威勢のよい声が響いた。店の中には既に、非常に貧相な身なりの人たちが数人、得体の知れないものを口に運んでいる。

 ツンドラ侯は、店のオヤジを正面にしたカウンター席(その真ん中の席)にドンと腰を下ろし、

「今日は、なんだっけ? アレだよな、アレ、『神話の山地の珍味展』だ。頼むぜ!!」

 わたしはプチドラを膝に乗せ、ツンドラ侯の隣の席に腰掛けた。今日は、一体、どんな目に遭わされるのだろう。刑の執行の瞬間を待つ死刑囚の心情とは、このようなものだろうか。


 しばらく待っていると、オヤジが、料理の盛り付けられた大皿を幾つか、自分の胸の高さ程度に持ち上げながら、カウンターの奥から現れた。

「お待たせしました。当店自慢の珍味の数々でございます」

 ああ、来るべき時が来たか…… わたしは思わず目を閉じた。

 ところが……

「うぉー、この蒲焼き、いけるぞ、最高にうまいぞ! それに、なんだ、これ、タンシチューか。こっちも素晴らしい、やはりオヤジ、おまえは天才だ!」

「えっ? 蒲焼き?? タンシチュー???」

 わたしは(さっきとは逆に)思わず目を開けた。目の前に置かれていたのは、見た目、普通の鰻の蒲焼きとタンシチューそのもの。プチドラも、不思議そうな顔をしながら、じっとその蒲焼きとタンシチューに見入っている。

 ツンドラ侯は大きな口を開けて、その怪しげな(しかし、見た目はおいしそうな)蒲焼きとタンシチューを同時にほおばり、

「どうした、ウェルシー伯、今日は体調でも悪いのか? ならば、そういうときこそ、栄養のあるものをたくさん食べるんだぞ!!」

 すると、店のオヤジはニッコリとして、

「気に入っていただけたようですな。今、お持ちしましたのは、メデューサの髪の毛、つまり蛇の蒲焼きと、ミノタウロスのタンシチューでございます。そして、次にお持ちしますのは、本日のメーン……」

 オヤジはそう言って、一礼すると、カウンターの奥に姿を消した。


 程なくして、オヤジが持ってきたのは、大きな……、人の足くらい大きさの超特大の鳥肉のような……

「お待たせしました。景気づけにひとつ、ハルピュイアのささみ刺身でございます」

 オヤジは笑みは、わたしの目にはまるで悪魔のように見えた。三度目、超特大暗転……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ