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ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第15章 常識を外れた人たち
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既に飽きが来ているパターン

 わたしはプチドラを抱き、パターソンが用意した馬車に乗った。これから宮殿で、裏工作に励むことにしよう。今日こそは、ツンドラ侯とばったり出くわし、彼の警察長官としての権力を乱用(悪用)してもらわねばならない。警察長官なら、信徒の不当逮捕や教団施設への不当逮捕など、教団の暴発を誘発するに足る圧力(あるいは、嫌がらせ)を加えることができるだろうから。

 馬車は、宮殿までの道のりをゆっくりと進んでいく。道すがら、プチドラはわたしを見上げ、

「マスター、教団に暴動や武装蜂起を起こさせるって、最初は夢物語的な感じもしたけど、存外、うまくいくかもしれないね」

「そうね。帝国宰相やコーブ事務局次長に働きかけても難しそうだけど、教団には、ツンドラ侯並みの馬鹿……いえ、失礼、『単細胞』かしら、キャンベル事務局長がいる。ツンドラ侯の教団への圧力に加えて、事務局長の嫉妬心を煽れば、多分……」


 屋敷を出てしばらくすると、馬車は宮殿に到着した。宮殿前には、馬車の列ができている。意外と混み合っているようだけど、何かあるのだろうか。

 プチドラは窓からひょいと頭を出し、周囲をぐるりと見回すと、

「マスター、宮殿前の馬車は、昨日パーシュ=カーニス評議員が言ってた会議に出席する人たちの馬車だね。『大盤振る舞い』の出し物を最終的に決定するための会議があるという話だったから」

 言われてみれば、なるほど、そういうこともあった。ただ、宮殿で会議が開かれるなら、その分、ツンドラ侯に出会う確率も高まるだろう。

 宮殿前に並ぶ馬車の列は、思いの外、スムーズに流れ、結局、宮殿前での待ち時間は10分程度。わたしはプチドラを抱いて馬車を降り、宮殿の玄関にて、もう一度「よしっ」と気合いを入れた。


 そして……

「迷ったね、マスター」

 プチドラは、わたしを見上げた。宮殿の中を歩き出してから今まで、20分も経っていないはずだ。わたしには、そもそも方向感覚というものが備わっていないのだろう。

「そうね、迷ったけど……、いつものことよ。問題ないわ」

 毎度のことで既に飽きが来ているかもしれないけど、いつものことなら、迷った後で、帝国宰相なり、パーシュ=カーニス評議員なり、いつものメンバーが、特にこれと言った理由や脈絡もなく歩いてくるはず。

 果して……、

「ほら、やっぱり来たわ。『問題ない』って、言ったとおりでしょ」

 その時、宮殿の長い廊下の奥から、何やら話し声が響いてきた。その声は、少しずつこちらに近づいてきているようだ。「やはり、マンネリは不滅」と、そう思った瞬間……

「あの~、マスター、『問題ない』わけじゃなさそうだよ」

 プチドラは、「やれやれ」といった顔でわたしを見上げた。

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