帝国における神々
「へえ~、そうなの……」
適当に手にとって頁をめくり始めた「帝国2000万の神々(第1巻)」だけど、なかなかどうして、結構興味深い話が続いている。
同書では、帝国2000万の神々について、その出自等を基準としていくつかのパターンに分類している(神の名に付せられた固有名詞については割愛しよう)。
そのパターンを列挙すると……
①理念神……抽象的な理念の神格化であり、例えば、秩序の神、公平の神、美の神、知性の神、混沌の神といった神々が理念神に分類されている。面白いのは、秩序の神があれば、「秩序」の反対の概念である「混沌」も神格化されている点。ちなみに、同書の説明では、「戦争や暴動や虐殺の背後には混沌の神の力が働いているため、混沌の神には静かにお休みになっていただくよう、祈りを欠かしてはいけない」とされている。
②自然神……自然的な事物の神、例えば、火の神、水の神、雷の神、日の神といった神々であり、「炎が燃えさかるのは火の神の力が働くから」といった具合。なお、伝統的なファンタジーでは、自然の事物にはサラマンダーやウンディーネなどの精霊が宿るとされるのが通例だが、この世界では「神」と「精霊」の間に厳格な区別はなく、互換的に用いても支障はないようだ。
③祖先神……どの家庭でも、基本的にはご先祖様を大事にして、墓参りは欠かさないという。その代わりというわけではないが、ご先祖様は(当然ながら、親でも祖父母でも往生すれば)草葉の陰から子孫を見守り、一族の繁栄のため力を貸すことになる。ただ、実際問題として、立派なお墓を建立できるのは貴族や大商人などに限られるため、下層階級の人々の祖先神というものは、事実上想定しがたいとのこと。
④英雄神……勝利を続けた武将や地域の実力者が、没後、「存命中は大変お世話になりました。今度は神様となって町を守ってください」というような発想で、文字どおり神様に祭り上げられ、人々の信仰を集める例も数多くあるという。
⑤生活神……街道の神、家屋の神、図書館の神など人工物が神格化されたものや、料理の神、学問の神、剣術の神など人の営為が神格化されたもの。変わったところでは、トイレの神や夫婦喧嘩の神など、多少ネガティブな印象を与えるものもある。また、生活神のうち、大工の神や鍛冶屋の神など、職業に関わるものを特に抽出して職業神と分類する場合もある。
⑥動植物神……例えば、犬の神、猫の神、ライオンの神、ひまわりの神、チューリップの神など、動植物にも、その元締め的な意味合いで神様がいるという考え方。なお、ゴブリンの神やオークの神など、モンスターにも、動植物神と同じような意味で神様を措定することは可能であるが、モンスターの神を信仰する例はほとんど確認されないという。
⑦融合神……一つの神格が上記のいくつかの特徴を併せ持つ場合があり、例えば、皇帝(ひいては帝国全体)の守護神とされる最高秩序神は、①理念神(最高秩序)と③祖先神(皇室の祖先)と④英雄神(初代皇帝)という三つの性質を有する神とされる。
帝国における伝統的な宗教(神々)は、今までまったく意識に上ることもなかったが、要約すると、以上のようなものらしい。